吉右衛門の次郎左衛門は、極めつき!(籠釣瓶花街酔醒)
二回目の『籠釣瓶花街酔醒』は、一階席のチケットを格安で購入することができました。お陰で、前回よりも舞台に近くなって花道も端から端まで観ることができます。

最初に観た時は、ただただ尾上菊之助の八ツ橋にばかり目が行ってしまい、ほれぼれと眺めていました。今回は、中村吉右衛門の次郎左衛門から目が離せなくなりました。「見染め」から「縁切り」をへて「殺し」に至る極限の感情表現を見事に演じています。
「見染め」の場面では、田舎者ながら商売一筋の真面目な絹商人の旦那が、花魁道中の八ツ橋を見た瞬間一目惚れして魂を吸い取られ、涎をたらさんばかりにポカンと口を開けて放心状態になった姿は共感を誘います。
「縁切り」の場面は、身請けの話しまで進んでいる中、急に「愛想づかし」をされ「寝耳に水」といったような驚きと戸惑い。天国から地獄に突き落とされた行き場の無い感情を押し殺し花魁に語りかけるところは、次郎左衛門が人が良いだけにじんわりとした哀れさと同情が、舞台上だけでなく観客全体に広がっていきます。「何も、満座の中で愛想づかしをしなくてもよいじゃ〜ないか!」と思わせるところは、極めつきの演技と言えます。
「殺し」に至る場面では、恥辱を受けてから四ヶ月後何もかも整理し再び吉原に現れます。我慢に我慢を重ねてきた分、憎悪の念も大きく深く修復できるものではありませんでした。次郎左衛門が、「籠釣瓶」の刀で一刀で斬り捨てるところは恨みと決意の固さを思わせる凄みと怖さがあります。
一途で純粋な思いが、狂気へと変わっていく様子が見事に表現され、円熟した最高の芸を生み出しています。
吉右衛門のハラ芸(精神性)の高さ、円熟期を迎えた芸術性、間違いなく最高傑作の舞台の一つに挙げることができます。十分過ぎる満足感を得られた舞台です。
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私は現・松本幸四郎丈のを観た飲ませてが最初でした。八ツ橋は六代目・中村歌右衛門丈。愛想づかしの場面で繁山栄之丞(十二代目・市川團十郎丈)の視線を背中に感じながら言いづらそうに愛想づかしを言う六代目・歌右衛門丈の腹芸も見事でしたが、幕切れの「籠鶴瓶は良く斬れるなあ。」の現・幸四郎丈の形相は想い出しでもぞっとします。
ヌーベルハンバーグさん
1988年9月の歌舞伎座公演・歌右衛門の一世一代の八ッ橋をご覧になったのですね。羨ましい! 私たちは、歌右衛門さんの歌舞伎を観たことは、一度もありません。とっても残念です。映像では見たことがありますが、歌右衛門さんの舞台を生で観てみたかったです。早い者勝ちですね。
ところで、ヌーベルハンバーグさんは、ハンバーグが好きなのですか? わたしは、ハンバーグが大好きです。
ところで、ヌーベルハンバーグさんは、ハンバーグが好きなのですか? わたしは、ハンバーグが大好きです。
ハンバーグ大好きです。ただご推察かも知れませんが、フランス映画のヌーベルバーグを面白半分にもじっただけのハンドルネームですが。