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初春大歌舞伎は、玉三郎の『茨木』から!




 新年の歌舞伎座は、垂れ幕や中央の房が新しくなり紫色がことの外美しいです。自然と身が引き締まる思いで、大きな門松の中央を通りながら正面玄関をくぐります。新年最初の歌舞伎の始まりです。


新しい幕


目出鯛焼き 
 歌舞伎座内でしか食べられない「めで鯛焼き」。紅白のお餅が入っています。一年中売っていますが、私達は毎年お正月の最初の歌舞伎観劇で食べることに決めています。お正月の「めで鯛焼き」は、ひと味違って感じます。


 「昼の部」の一番楽しみにしていた演目は、『茨木』です。この演目は、新古演劇十種の一つで五代目菊五郎が市川宗家の十八番に対抗して練り上げた演目で、松羽目舞踊の名作です。
 伯母真柴(実は鬼女の茨木童子)を坂東玉三郎、渡辺源次綱を尾上松緑、太刀持音若を尾上左近(松緑の長男)で勤めています。

 最初に目につくのは、お正月らしく、華やかな舞台構成です。
 舞台中央の背景に巨大な松を描いた松羽目物。正面に長唄囃子連中がずらっと並びました。緋毛氈を掛けた山台に唄い方9人、三味線9挺。山台前下に左から太鼓1、大鼓1、小鼓4、笛1と総勢25人の大合奏はあまり観る機会がありません。あまりの多さに思わず数えてしまいました。勧進帳よりも多い気がします。

 松緑、左近親子が舞台に出、長唄のお囃子の後、まず、老婆・真柴の出が、能そのものです。花道を歩いて来る姿の中に、静謐で品格のある老婆であることを印象づけます。真っ白な髪の毛、白く塗り込められ灰色の陰のある顔は、面(おもて)を付けているのかと思わせます。玉三郎を観に来た観客は、「これが玉三郎なの?本当に?」という疑いと、あるいはガッカリ感を持ったかもしれません。美しい玉三郎ではないからです。しかし、ほとんど表情の無い老婆に漂う気品、甥を大切に育ててきたことを切々と訴える伯母のやりきれない思い、一旦は館に入ることを拒まれたものの甥の源次綱が招じ入れてくれた時に見せる笑顔、淡々と上品に演じていきます。しかも、片腕を渡辺源次綱に切りとられているので、片腕が無い状態で演じているのです。

 館に入った後に一差し舞う時も片腕だけで踊ります。源次綱に所望し、切りとった片腕を見せてもらう真柴が、鬼女に変わる瞬間の凄みは、背筋がゾッとする妖気が漂います。その後、鬼女・茨木になって(鬼の隈取りをして)登場する時よりも、この時の方が鬼女らしく思えます。
 玉三郎に若い赤姫や美しい踊りを求めていた人たちには、ちょっと耐えられなかったのか?途中で退席して帰ってしまうお客さんが多かったことが残念です。もちろん、私たちも玉三郎の『道成寺』や『鷺娘』が観たいと強く思います。ぜひ、もう一度踊ってほしいと願っています。しかし、老婆と鬼女を踊りこなす玉三郎も素晴らしいです。能の動きや舞いは、とても難しいです。相当研究し、練習を積まなければここまでの踊りはできなかったでしょう。己を良く知っていて、厳しい人だからこそ年齢に合った役柄と、その年齢でないと踊れないものにこだわっていることがわかります。そのために挑戦をし続けていることも伝わってきます。観る側ももっと玉三郎を理解し、目を養ってほしいと感じずにはいられませんでした。


 次に挙げたいのは、太刀持・左近の踊りです。まだ9歳なのに、9歳とは思えない扇を使った完璧な踊りを披露しました。松緑は踊りの名手です。その長男ですから才能もあるでしょうが、ここまで踊る稽古の厳しさは、如何ばかりかと考えてしまうほどです。父親の松緑と玉三郎の二人から教わったのかもしれませんが、将来がますます楽しみな左近です。

 最後に源次綱の松緑ですが、人情味溢れ豪快な武将で格好良い役柄を自分のものにしています。特に、幕切れに飛び去った鬼のゆくえを見送って、抜き放った太刀を前に流し、大口を開けて見得をするところは、格好良すぎなくらい素晴らしい型です。松緑の見得は、美しく絵になるポーズです。

 
 『茨木』以外、『梶原平三誉石切』の吉右衛門、芝雀、歌六は、何度も演じている役柄なので、安心して観ることができます。人気の時代物の作品でよく上演されます。面白い趣向がちりばめられ、楽しめる作品です。梶原景時役は、吉右衛門、幸四郎がやっていて良く合っていますが、今後若手のどの役者がこの役ができるのか?ちょっと心配になってもきます。

 いろいろな思いが交錯しながら、新たな歌舞伎の一年がはじまりました。




壽新春大歌舞伎 歌舞伎座 昼の部
  一 廓三番叟
  二 義経千本桜 鳥居前
  三 梶原平三誉石切 鶴ヶ岡八幡社頭の場
  四 茨木









テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

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南十字星

Author:南十字星
 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

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