fc2ブログ

玉三郎と中車出演の十二月大歌舞伎(昼の部)



 今月の歌舞伎座は、坂東玉三郎と市川中車(香川照之)が出演しています。

12月チラシ

 昼の部は三演目ありますが、時代物、喜劇、舞踊とバランスの良い構成になっています。

◎「本朝廿四孝:十種香』 時代物の中でも女方の大役、八重垣姫の出来次第で全てが左右される場面です。
 この演目は、お香が薫き染められ開演と同時に会場全体がお香の薫りに包まれます。何とも良い心地になってきます。
 八重垣姫は、歌舞伎の三姫(『金閣寺』の雪姫、『三代記』の時姫)の一つにあたります。今回この八重垣姫を中村七之助が,勤めていますが、実は3年前平成中村座で七之助(八重垣姫)と勘九郎(濡衣)で演じたのを観ていますが、この時の二人の「十種香」は良い点がありませんでした。ただ、台詞と型を覚えてきましたという印象で、特に七之助はこの役を演じるのは「まだ早過ぎる」とメモした記憶があります。あれから三年・・その進歩振りに目を見張りました。出の部分がもっとも重要な場面で、八重垣姫が背中で演技するものですが、七之助の演技力の進化をまず感じたところです。その後の所作の動きにも、色っぽさと美しさが増し、玉三郎からかなり教わったことが伺えました。

◎『赤い陣羽織』 劇作家・木下順二の民話劇をもとにした喜劇
 ちょっとスケベなお代官役を市川中車が演じています。中車は、襲名当時から比べると声の出し方が改善されて、会場全体に声が通り演技も磨がかれて、格段に良くなっています。この役は、中車にうってつけで、大笑いできる舞台だと「昼の部一番」の期待していたのですが・・、面白いことは、面白いのですが、小笑い(笑)って感じでしょうか。
 歌舞伎で笑いを取るのは、かなり難易度が高いものです。中車がもっともっと大袈裟に演じる必要があるのか?共演者(今回は中村児太郎、市川門之助)との呼吸がまだ合っていないせいなのか?間の取り方に問題があるのか?など、色々と考えてみましたが、それらすべて含めてまだまだ練り上げていく必要があるのかもしれません。作品としては絶対にもっと面白くなるはずな演目なので、今後に期待したいです。香川照之という現代劇の実力者俳優としての経験は、必ずや歌舞伎界に新しい風を起こし、中車にしか演じられない舞台を作り上げてくれることを信じたいです。

◎『重戀雪関扉(つのるこいゆきのせきのと) 顔見世物の劇舞踊の代表作で、常磐津物の大曲です。
 今回は、常磐津と竹本の掛け合い形式にアレンジして上演されています。
 前半の小野小町を七之助が、踊っています。この踊りも凄い進化を遂げています。七之助は、兄の勘九郎に比べると「舞踊」の腕前はかなり劣っていると感じていましたが、妖艶さが加わり、所作一つ一つにも美しさがあって、雰囲気だけで踊っていたのが技術も上がっていることがよくわかります。父・勘三郎亡き後、どれだけ精進してきたかが伝わってきます。
 後半の傾城墨染(小町桜の精)を玉三郎が踊ります。通常は、一人の女方が小野小町と墨染を踊ることが多いのですが、今回はそれぞれを別の役者が踊っています。人間ではない、この世のものでもない「桜の精」という役柄は、妖気漂う硬質な美しさのある玉三郎にしか踊れない墨染です。年齢を重ねてもなお透明感のある気品と、たおやかさはそのままで、経験を積まないと現せないような凄みのある表情を浮かべながら踊る様は、ゾクッとしびれるような衝撃を背筋に感じます。これは、七之助にも菊之助(以前、関の扉を一人で踊っています)にもできない技です。
 常磐津の大曲を竹本との共演にしたことによって、立役の関守関兵衛、実は大伴黒主(尾上松緑)を竹本(義太夫:三味線は太棹で音が低く、語り手/太夫の声は低めで速い語り口)、女方の小野小町、墨染を常磐津(三味線は中棹で音が高く、唄いの声も高くゆったりとしている)が担当することによって、メリハリがあって役柄の違いが際立つのに役立っていますが、常磐津の華やかな、のどかな音でないと現せない関守の踊りがあるように感じられたのも確かです。
 どちらが良いか?は、別として色々な挑戦をしつつ、その時代に合った演出を追究しつづける姿勢に歌舞伎の凄さと奥深さがあると思いました。

 今回は、花形役者(七之助、松緑、松也、児太郎など)と、歌舞伎役者として日が浅い中車が頑張っている姿が印象的でした。これからの歌舞伎を担っていく役者の奮闘はまだまだ続くと思いますが、長い目で歌舞伎を観ていきたいと思います。






テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

南十字星

Author:南十字星
 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

02月 | 2024年03月 | 04月
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -


FC2カウンター
フリーエリア
ポチッと押してもらえると励みになります。  ↓
最新記事
最新コメント
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
1303位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
演劇
72位
アクセスランキングを見る>>
リンク
検索フォーム