鴈治郎はん襲名、第三弾?
今月歌舞伎座で開催されている「鴈治郎襲名公演」昼・夜の部両方を観ました。ただし両方とも三階からの観劇だったので、花道はスッポン周辺しか見えません。夜の部の両花道を使った歌舞伎役者勢ぞろいの口上、『河庄』での鴈治郎の花道の出が見えなかったことが心残りでした。
そこで今年は封印しようとしていた一等席をヤフーオークションで入手し、来てしまいました。そうです。今月三度目の歌舞伎座です。

花道脇の最高の座席です。花道がこんな風に全部見えます。
口上では、仁左衛門が鴈治郎を連れて花道を歩いてきます。仁左衛門の見目麗しい姿と初々しい鴈治郎の艶やかに、思わず拍手にも熱がこもります。すると、な・な・なんと、鴈治郎はんがこちらに顔を向けて、流し目で通り過ぎていきます。思わず目が離せなくなってしまいました。
その後、両花道に名だたる役者がずらりと並びます。私たち側の花道には、左團次、歌六、又五郎、染五郎、松江、権十郎、團蔵、彦三郎。見上げて観ていると役者と目が合ってしまい、ちょっと恥ずかしくなってしまう位置です。ドキドキ、ワクワクの興奮状態で左右の花道を交互に見渡してます。役者に近いということで舞台の印象と感動が全く違います。自然と顔がニヤニヤしてしまいます。
『河庄』では鴈治郎はん扮する治兵衛の出が最も重要です。義太夫の「魂抜けてとぼとぼうかうか」に合わせ、つっころばし型の優男の憂いを全身で表現する場面です。その治兵衛に成りきった鴈治郎の姿を花道の揚幕が開いた瞬間から観ることができました。目の前を通り過ぎようとした時、思わず「鴈治郎はん!」と掛け声をかけたくなる衝動にかられました。全身全霊をかけて挑んでいる治兵衛に「魂抜けて〜」ではなく、「魂吸い取られてうっとり」と魅入ってしまいました。
鴈治郎の治兵衛、芝雀の小春、梅玉の兄・孫右衛門は、それぞれの任に合った役柄で珠玉の出来栄えです。襲名公演にふさわしい最高の舞台でした。
やっぱり一等席は、素晴らしい!と再度実感させられました。『河庄』を二度、しかも今回は一等席で観ることができたことは本当に幸せなことでした。