鴈治郎はん襲名公演、第二弾!
春の嵐? ここ数日は、大気が不安定で急な雷雨が度々訪れます。この日もこんなに青空なのに、雷雨、雹、竜巻に注意という天気予報です。

「昼の部」の襲名公演も満席とまではいきませんが、一幕見席の客入りは多かったようです。
鴈治郎襲名の主演目『廓文章:吉田屋』は、鴈治郎が藤屋伊佐衛門を太夫夕霧を父・坂田藤十郎が勤めています。上方和事の代表作で、鴈治郎はんは大阪の襲名公演で初役で演じています。これから練り上げられていく役の一つです。
鴈治郎も相当頑張っていると思いますが、ぽっちゃりした体型が災いして優男にちょっと合わない気がします。そして恋人である夕霧を父親(藤十郎)が演じているため、見ている方も「この設定には、やっぱり無理があるなぁ・・・」という感が否めず気持ちが乗らない空気が漂ってしまいます。ちょっと期待以上とは言えません。
この演目は、片岡仁左衛門と坂東玉三郎のコンビが絶品なので、この二人を超える舞台は当分出てこないと思います。観ている方は、常に今までの舞台を比較しながら観ていてハードルが少しずつ上がっていくので、比較される役者も大変だなぁ〜とは思います(笑)。
「昼の部」で良かったのが『六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)』。「六歌仙」の中の『文屋』と『喜撰』は、単独で上演されることは良くありますが六歌仙すべての上演はめったにありません。
出てくる役者が豪華です。仁左衛門、菊五郎、吉右衛門、魁春、左團次、梅玉、芝雀と蒼々たる役者が次々に登場して小野小町(魁春)を巡る洒脱な舞踊を披露します。音楽も「長唄」「常磐津」「清元」と総出演の豪華絢爛な舞台です。
官女たちに取り囲まれてユーモラスに踊る『文屋』は、仁左衛門が実に見事な舞台を披露しました。出てくるだけで、匂い立つ色気とオーラがあり、見目麗しい仁左衛門のひょうきんな姿にまたうっとりとしていまいます。
「六歌仙」の中心的演目『喜撰』は、菊五郎と芝雀の舞踊です。菊五郎のちょっとスケベったらしい顔や仕草は、花道に登場しただけで笑いが起こります。年齢を重ねて、酸いも甘いも知り尽くした役者にだけ踊れる味わいのある喜撰法師です。年齢的に身体がついていかないところがありますが、そういった全てを超越した極みの芸があります。菊五郎にしか踊れない喜撰法師です。
数年前に亡き三津五郎と時蔵が踊った時の印象とは別の凄さがありました。舞踊の名手だった三津五郎の喜撰法師は完璧な踊りです。しなやかさと歯切れの良さを兼ね備えた絶品の舞台で、まさに模範とすべきものです。時蔵との呼吸もピッタリで、時蔵の巧さと三津五郎の巧さが互いを引き立て舞踊の面白さに気づかされた舞台でした。もし、三津五郎が長生きして菊五郎の年齢に達した時に踊ったならば、どんな舞台を魅せてくれたのか?と思うと、残念で残念でなりません。もしかしたら、菊五郎を超えていたのでは?と、感じるからです。
役者は、年齢を重ねてますます良い味が出てきます。技術的ものでは測れない奥深さ、経験の豊かさを加えた芸が見られるのだと思います。
四月大歌舞伎 歌舞伎座 昼の部
鴈治郎襲名披露
一 碁盤太平記
二 六歌仙容彩
三 廓文章 吉田屋