歌丸さん、二年越しで頑張る!
四月の国立演芸場「中席」では、桂歌丸さんがとりを勤めています。10日間の座席はすべて完売しています。演芸場入り口には「満員御礼」の垂れ幕がかかっていました。気づいたのは、4月6日の夕刊でした。歌舞伎にもなっている三遊亭円朝作の「塩原多助」を歌丸さんが二年がかりで挑戦すると。その夜すぐに完売間近のチケットを入手できたのは本当にラッキーでした。いつも歌舞伎やバレエの演目に関する上演情報には目を光らせていますが、ちょっとうっかりしていて危なかったです。

今回、歌丸さんが挑戦するのは三遊亭圓朝作『塩原多助』の前半『青の別れ』の場です。
歌丸さんは慢性閉塞性肺疾患で呼吸困難な状態なうえ、今年1月にはインフルエンザで入院しており、もともと痩せているのに一層やせ細りかなり辛そうでした。50分もかかる長丁場の演目にもかかわらず、気迫のこもった一言一言、良くとおる声、まさに命をけずって噺すその姿に深い感銘を受けます。
聴いている側も一言漏らさずに聴こうと、会場は波を打ったように静かです。
『塩原多助』は、笑えるような話しではありませんが、義理・人情を表した良い話しです。落語から歌舞伎の演目にもなり、数年前「国立劇場」で昭和29年以来となる通し上演で話題となりました。先日亡くなった坂東三津五郎主役の舞台でしたが、残念ながら観に行かれませんでした。「後悔先に立たず」とは、このことです。今、観に行かれなかったことをとっても悔やんでいます(泣)。今回、歌丸さんが本来の落語の演目として上演するのも『何かの縁』だと感じます。いつかまた歌舞伎で上演されることを願いつつ、歌丸さんが二年がかりで挑むこの大作に私たちも正面から向き合おうと思います。
後半は、来年の四月です。前半の筋を忘れないうちに聴きたいところですが・・・(笑)。歌丸さんには、ぜひとも元気に頑張ってほしいです。落語界でも大切な存在であることをしみじみと感じた一日でした。