がんじろうはん!襲名(夜の部)
中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名が、新歌舞伎座で開催されています。新歌舞伎座での襲名披露公演は、開場以来初めてです。上方役者なので、まずは今年の一月に大阪で襲名披露公演を行い、今月は歌舞伎座、その後12月の京都南座まで全国をまわります。

家紋の「イ菱」が中央に染め抜かれた鮮やかな祝幕です。新歌舞伎座では最初の両花道のつくりになっています。両方の花道に役者が並ぶとそれは豪華で華やいだ雰囲気になります。一等席の人が羨ましい。

歌舞伎には、関東の歌舞伎と上方の歌舞伎という大きな二つの流れがあります。当代では、坂田藤十郎、片岡仁左衛門、中村鴈治郎らが上方勢で、尾上菊五郎、中村吉右衛門、市川海老蔵といったあたりが関東勢の役者の中心といった感じでしょうか。
関東の威勢や気っ風のいい歌舞伎と違い、上方歌舞伎は和事と言われ、大店のボンボンが芸者に入れあげた話などの一見弱々しい和らかい芸風が特徴で近松の心中物などが人気となっています。
「夜の部」のメインは『河庄』なのですが・・・最初の演目『石切梶原』で松本幸四郎が演じる梶原景時・・・この日の幸四郎は気合いが入っていました。確かに良かったです。この幸四郎に対する大向こうの掛け声がまた凄かった!親衛隊が来ているのでは?と思わせるような盛り上がりです。幸四郎の台詞「刀も刀」に続いて、大向こうから「役者も役者!」には、会場からどっと笑い声も上がって異常な盛り上がり。一体誰の襲名?なのかわからないほど。幸四郎の頑張りが、一際目立っている「夜の部」でした(笑)。
期待していたメインの『河庄』は、さすがに鴈治郎はん!気合いが入ってました。つっころばし型の優男の憂いを最初の出から存分に感じさせてくれます。やっぱり藤十郎によく似ています。手拭の頰っ被りが親子ともによく似合います。
そして周りの役者たちものびのびとやっていました。
特に染五郎と壱太郎(鴈治郎の長男)の寸劇がなかなか良いのです。壱太郎のエア三味線と染五郎の小唄が、何とも面白く風情があり、味があって面白いです。
兄役の梅玉と鴈治郎の絡みは、梅玉に軍配が上がるかな〜。梅玉って、本当に巧いのです。この人にこそ『人間国宝』をあげてほしいといつも思うのです。
台詞の少ない芝雀の小春は、感情をかみ殺した演技が素晴らしい。この人も来年は、雀右衛門を襲名することが決まっていて、これからますます精進していかなければなりません。知名度が低いのですが、玄人受けする実力派です。
歌舞伎も関西と関東では、好みも演目も違うので「襲名披露公演」にしては歌舞伎座の客の入りが芳しくありませんでした(。。;)
人間国宝である坂田藤十郎を父に持ち、祖父の二代目鴈治郎を目標にやっていきたいと公言する鴈治郎はんの道は険しいものかもしれませんが、ぜひぜひ頑張ってほしいです。
四月大歌舞伎(中村鴈治郎襲名披露) 歌舞伎座 夜の部
一 梶原平三誉石切
二 成駒家歌舞伎賑 口上
三 心中天網島 河庄
四 石橋