『白鳥の湖』〜モンテカルロ・バレエ団〜
バレエと言えば『白鳥の湖』が基本。しかも、今までは『白鳥の湖』が全てだった私たちにとって、観ておかなければ・・という思いと、このポスターに魅せられて東京文化会館にやって来ました。

モナコ公国モンテカルロは、かつてバレエ・リュスが本拠地としていた地です。その精神を受け継ぐ「モンテカルロ・バレエ団」が、振付師ジャン=クリストフ・マイヨーの新創作した『LAC〜白鳥の湖〜』を引っさげて来日しました。パリ、ロンドン、ニューヨークで絶賛されたという舞台。新たな期待に胸が高鳴ります。
バレエ・リュスとは、革新的なステージで一世を風靡した伝説のバレエ団ですが、その影響は多くの芸術活動に影響を及ぼしなかなか一言で説明するのは難しいです。その精神を受け継いだ「モンテカルロ・バレエ団」はバレエ団となっていますが、モダン・ダンスのカンパニーです。
余談ながら、「LAC〜白鳥の湖〜」のLAC(ラック)とは、フランス語で「湖」のことです。白鳥の湖は「Le Lac des cygnes」となるようです。
内容は、正直、かなりガッカリしました。特に前半はストーリー性が全く無く、曲に合わせたコンテポラリーダンスで無意味?と思うような、曲と動きが全く合っていない動きが多すぎてうんざりしました。
後半は『白鳥の湖』のストーリーを踏襲していて、衣装も工夫を凝らされ、舞台演出も斬新なものがありました。二人の男性を羽に見立てたオディールなど素晴らしい演出がいくつもありましたが、一番良かったところは、ラストの終わり方です。グレーの幕が風になびき雲のように降りて来て、全てを消し去る演出にはイリュージョンのような驚きがあります。
「終わり良ければ、全て良し」か?とは、今回の場合は言えません。舞台としての見所は後半部分だけ。また、振付師の感性が疑われるような、曲と動きのちぐはぐさ。観ていて、下品と感じる振付け動きがかなりあり、芸術性と美的センスに欠けることなどが挙げられます。
あのチャイコフスキーの名曲「白鳥の湖」を使いながら、なぜこのヴァイオリンのソロの聴かせどころ魅せどころで何もしないの?なぜこの音楽のときにこんな動きをするの?と疑問とイライラがつのります。
同じ革新的な演出と芸術性の高い舞台で感動を与えてくれた、マシューボーンの「SWAN LAKE」とは大違いです。
残念ながら、『白鳥の湖』の高貴さと芸術性を貶めていると感じてしまいました。モダン・ダンスとバレエの違いなのか?バレエに求めるものの違いなのかもしれません。逆に、自分たちがバレエに何を求めているか?が、はっきりとわかった舞台でもあり、非常に勉強になりました。