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能『松風』



 



 第十七回鵜沢久の会が、宝生能楽堂で開催されました。2週間前に事前勉強会に出席した成果を楽しみに、今回の「能」に臨みました。


 宝生能楽堂の舞台
宝生能楽堂
 久しぶりの宝生能楽堂です。今年2月の大雪の時に来たのを思い出します。あの時は、電車が止まるのを懸念して一番だけ観て帰りました。



 能『松風』は、観阿弥・世阿弥父子による名曲です。須磨の浦に流された在原行平への思いを断ち切れない二人の海女姉妹の悲しみと追憶を描いた話しです。この二人の姉妹役を鵜沢久・光親子で、シテ(松風)とツレ(村雨)を勤めます。

 久さんと光さんの声の質が良く似ていて、二人で合わせて謡う場面、一人一人で謡う場面がありますが、最初は区別がつきません。良く聴いていると、低い声がシテの久さん、少し高い声がツレの光さん。女能楽師親子で、姉妹役を舞うこと自体が珍しいことです。この演目の選択は、素晴らしいと思いました。

 シテの松風が、扇を使って桶に汐を汲み、桶に映る月を見るシーンは、情緒的で実に美しい。
    地謡『さし来る汐を汲み分けて、見れば月こそ桶にあれ、 』
    シテ『これにも月の入りたるや、』
    地謡『嬉しやこれも月あり、』
    シテ『月は一つ、』
    地謡『影は二つ満つ汐の、夜の車に月を載せて、優しさとも思わぬ汐路かなや。』
 桶に宿った月影が、汲み入れる汐のためにゆらゆらと砕け、それが静まって再び桶の中に月影が映るのを眺める。この一連の所作と地謡との掛け合いがなんとも美しい場面です。

 松風が松の木を見て、行平への恋慕を募らせ狂乱して舞う「中之舞」。小書きにある「見留」は、「破之舞」が橋懸かりで引込みが終わるものです。久さんが勉強会で話していた通り、とっても印象的でした。

 正直、事前勉強会に出ていなかったら、今回の能の素晴らしさ、奥深さは全くわからなかったと思います。

 

 能を語る時によく聞く言葉に『熊野松風は米の飯』という言葉があります。
 能「熊野」と能「松風」は、米の飯と同じぐらい誰にでも好まれる名曲であるという意味だそうです。
 在原行平を恋い慕う女心を美しい詞章で綴った名文句が並び、「古今和歌集」で行平が詠った『立わかれいなばの山の峰に生ふる松としきかば今かへりこむ』という別離歌を、クライマックスに見事に舞と歌をミックスさせた手法は確かに素晴らしく名作の名にふさわしいと思います。
 ただし、鑑賞者としては、その名作に酔うだけの教養と修練が必要で、今日はそのほんの一端に触れただけに過ぎない、上級者向けの作品だと思いました。
 いつか、この「松風」に心から酔いしれるだけの鑑賞眼と教養を身につけていきたいなと心に誓った観能でした。





第十七回鵜澤久の会 宝生能楽堂
  狂言「鐘の音」 野村太一郎 河野佑紀
  能「松風」見留
     シテ松風 鵜澤久
     ツレ村雨 鵜澤光
     ワキ   殿田謙吉
     大鼓   亀井忠雄
     小鼓   観世新九郎
     笛    藤田治郎









テーマ : 伝統芸能
ジャンル : 学問・文化・芸術

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 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

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