三代目 尾上左近初舞台!
大歌舞伎夜の部では、尾上松緑の長男が三代目尾上左近として、初舞台を踏みます。今までは、本名の藤間大河で時々出演してましたが、これからは一人前の歌舞伎役者として舞台に立つことになります。

左近襲名披露の『蘭平物狂』では、松緑が蘭平を、蘭平の子繁蔵を左近が演じ、役の上でも親子です。蘭平の子を思う親心が、「左近」を襲名する我が子への思いと重なり、役を超えて情愛に満ち溢れた気迫のこもった演技で素晴らしい舞台でした。
後半の大立ち回りは、今まで観て来た中でも一番の「立ち回り」です。歌舞伎の「立ち回り」は一つとして同じものはありません。工夫を凝らし、舞台を美しく魅せる演出に毎回驚かされます。今回は、花道七三に消防の出初め式のように梯子を立てての立ち回りは圧巻で、その高さは二階席を優に超え三階席に届く勢いです。見せ場も多く見事なもので、何度も『あっ!』と驚かされ、興奮の連続です。
この演目の主役「蘭平」は、その「立ち回り」の激しさから演じられる年齢が限られてしまう貴重な演目です。若すぎては芝居としての味が出ず、歳とっては「立ち回り」が出来ません。何しろ屋根の上から石灯籠へ飛び降りたり、梯子を登ったり、回されたり落とされたりと、歌舞伎演目中一番の大立ち回りですから。
「祝幕」

「祝幕を納める桐箱」

さすがは御曹司! 8歳でも襲名するとなると、祝幕や納めの桐箱、配り物の扇子の原画など一人前の歌舞伎役者としての扱いで、すごいなぁ〜と思いました。
弱冠8歳。こうやって生涯、役者として生きていくのも大変なことです。
「夜の部」の二つ目の演目は『素襖落(すおうおとし)』:狂言を元にした舞踊で、松本幸四郎が酔っ払いをユーモラスに演じます。
最後の演目『名月八幡祭(めいげつはちまんさい)』は、あまりにも素晴らしかったので、今年初めてとなる一等席を購入して明日もう一度観に行くことにしました。この舞台をもう一度観ないと絶対に後悔するという思いが、観た直後からこみ上げて来て、いてもたってもいられませんでした。この思いが、二度観ても変わらないものであるか?確かめてから、感想を載せたいと思います。
六月大歌舞伎 歌舞伎座 夜の部
一 蘭平物狂
二 素襖落
三 名月八幡祭