五代目 中村雀右衛門襲名披露公演(夜の部)
今月歌舞伎座では、五代目中村雀右衛門襲名披露公演が開催されています。先日、昼の部を観て「今月は、もういいか〜」と思っていたのですが、夜の部の雀右衛門の『雪姫』の評判が良かったので、やはり観ておかないとまずいかなと考え直し観ることにしました。
雀右衛門の名を継ぐこと=(イコール)赤姫を演じるというのは、いかがなものか?ということは、前回の昼の部でちょっと触れましたが、夜の部の『祇園祭礼信仰記:金閣寺』の雪姫も赤姫の一つです。芝雀の赤姫は、必ずしも合っていると思えなかったので、ちょっと二の足を踏んでいました。
『金閣寺』の場面は、何と言っても美しく豪華です。舞台の下手には滝が流れ落ち、中央には黄金に輝く金閣寺が大ゼリで上下します。両側に満開の桜が咲き乱れ、舞台全体が華やかな錦絵になっています。隣の外国人が、幕が開くと同時に「ワォ〜!ビューティフル!」と感激していました。まさに息を呑む美しさです。
雪姫役は、芝雀の時に演じているので初役ではありません。胴体が太いのも赤姫役には災いしていますが、減量もして少しほっそり(笑)した雀右衛門。桜色の着物は、雀右衛門に良く合っています。うつむき加減で身体をねじる姿が何とも可憐です。降りしきる桜の花吹雪に心が揺さぶられ、日本人ならではの情感に訴えてくるものがあります。情景の美しさと雀右衛門の渾身の演技が、ひしひしと伝わってきて、納得のいく素晴らしい舞台でした。
今回は、観た席も良かったのです。後方ではありますが、一階で観る舞台はやはり違います。
最後の演目『関三奴』は、15分足らずの短い舞踊ですが、これがことの外面白かったです。
中村鴈治郎、中村勘九郎、尾上松緑の当代の踊り上手の三人が登場します。同じ踊りを三者三様で踊ります。
ひょうきんさと柔らかさを兼ね備えた鴈治郎の踊り、リズミカルで切れ味抜群の勘九郎、安定感と型の美しさが絶品の松緑のそれぞれの踊りにすっかり魅了されました。
素晴らしい幕切れに大満足の「夜の部」でした。観に来て良かった! 来なかったら後悔しているところでした。
三月大歌舞伎 歌舞伎座 夜の部
五代目中村雀右衛門襲名披露
一 双蝶々曲輪日記 角力場
二 口上
三 祇園祭礼信仰記 金閣寺
四 関三奴
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