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玉三郎監修の『妹背山婦女庭訓』



 今月大歌舞伎の「夜の部」は、『通し狂言 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』です。

妹背山板絵 

 『妹背山婦女庭訓』は、大化の改新を題材にした五十二段からなる大作です。この中の「杉酒屋」の一人娘・お三輪を中心に三人の男女の恋の絡み合いを描いた「道行恋苧環」「三笠山御殿」の場面を通しで上演しています。

 前半の「杉酒屋」「道行恋苧環」のお三輪を中村七之助が、後半のクライマックス「三笠山御殿」のお三輪を坂東玉三郎が演じています。
 通し狂言の場合、途中で同じ役を別の役者が演じることがよくありますが、できればこれはやめてほしいといつも思っています。同じ役は、同じ役者で通してやってもらわないと、わかりづらい物語がますますわからなくなったり、雰囲気が変わって別の物語を観ているみたいになったりします。今回も七之助か、玉三郎のどちらかで演じてほしかったというのが、正直なところです。

 三人の男女とは、お三輪、求女/実は藤原淡海(尾上松也)、橘姫(中村児太郎)です。お三輪が七之助だと三人の世代が近いので、恋のかけひきも違和感がありません。配役も合っているので、観ている側も自然に理解できるものがあります。しかし、「三笠山御殿」のお三輪は、女方でも大役であり、非常に難しい役でもあります。田舎娘のちょっとおどおどした雰囲気、官女にいじめられ哀れな風情、うぶな少女から嫉妬にかられ女のおそろしい本性をあらわす悪相「疑着の相」を表現しなければなりません。これを七之助が演じるには、残念ながら役不足です。そこは、さすが玉三郎と言わざるをえません。可憐な少女が、一瞬にして髪を振り乱し、恐ろしい形相に変わる目力の凄まじさが、三階席までピリピリと伝わってきます。役者の大きさを感じさせる場面でもあります。
 どちらの役者が通しで演じるべきだったかは、難しいところです。ただ、いつか七之助がすべて演じることを期待し、玉三郎が「疑着の相」を伝授し稽古をつけていたことだけは、よくわかります。

 今回特筆すべきことが、もう一つあります。
 市川中車(こと香川照之)が、初女方をやったことです。ほんのちょい役「ごちそう」と言いますが、おばさん役なのですが、顔を出しただけで面白い!真っ白に塗った顔は、わざと?か、青くひげの跡が残り、がらがら声で不細工な内股歩きが際立ち、会場がドッと受けて笑いが起こります。出てくるだけで受ける役者の存在は、本当に貴重です。中車は、今やそういう存在になりつつあることを強く感じた瞬間です。
 次は中車の踊りが観たいです。踊りができなければ歌舞伎役者とは言えません。ぜひとも面白い踊りに挑戦して本物の歌舞伎役者になってほしい!と、願っています。














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テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

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 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

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