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十二月の四谷怪談




 大好きな歌舞伎演目の一つで、首を長くして待っていた『東海道四谷怪談』が、今月国立劇場で開催されています。

四谷怪談

 「四谷怪談」は、夏の納涼歌舞伎で上演されることが多く、夏の怪談話のイメージを強く持っていましたが、今回の『通し狂言 東海道四谷怪談』を観て、ちょっと違うなって感じはじめています。

 『東海道四谷怪談』は、四世・鶴屋南北の最高傑作で文政八年(1825年)七月江戸・中村座で初演されました。初演当時は、赤穂浪士討ち入り事件を題材にした『仮名手本忠臣蔵』との共演でした。両作品の場面を半分ずつ分けて、二日掛かりの通しで上演されていたようです。
 その初演当時の趣向を踏まえ、物語の背景が「忠臣蔵」の世界であることがわかるように工夫され、最後の場面を赤穂浪士討ち入りで締めくくっています。
 国立劇場での上演は四十四年振りです。「四谷怪談」が単なる幽霊話ではない、赤穂浪士四十七士討ち入りの表舞台に出て来ない陰に潜む哀れで残酷な世界を描いています。

 松本幸四郎演じる民谷伊右衛門をはじめ、お岩の父四谷左門、お袖(お岩の妹)の許嫁佐藤与茂七、小仏小平が仕える主人小塩田又之丞は、すべて塩冶家(浅野内匠頭、浅野家)の浪人です。伊右衛門は、赤穂浪士の義士に加わることができず、どんどん落ちぶれ極悪非道の道へ転げ落ちてゆくもので、歌舞伎の色悪「悪の華」として象徴される役柄です。立役なら一度は演じてみたい役です。幸四郎は、色悪を超え悪党にはまりすぎていて、大向こうから「高麗屋」ならず「悪党!」と声がかかっていたのには、笑ってしまいました。ちょっと年を取りすぎて、太ってしまった幸四郎の伊右衛門は、若々しさと美しさが足りません。

 お岩、小平、与茂吉を演じた染五郎は、早替わり、宙乗り、提灯抜けと大活躍。戸板返しのお岩、小平の表と裏の早替わりは見物です。夫・伊右衛門に裏切られ、この世に思いを残して死んでゆくお岩の切なさを丁寧に演じています。おどろおどろしさがもっとあるといいなぁ〜と思う点もありますが、相当頑張っているのは確かです。櫛で髪をとかすたびに髪の毛が抜け、前髪がごっそり抜けた後の血がしたたっているところは、ゾッとするものがあって良かったです。

 会場の両脇につけられた提灯が一つ、二つと白く灯ったり、赤く変わったりと不気味な雰囲気がしてきます。2階の客席後方から時折上がる叫び声が、緊張感と怖さをいやが上にも増していきます。観客を巻き込んでのエンターテイメント性があって、よく考えられた演出に大満足。宙乗りも逆さ吊りで、悪人の首を紐でつり上げてゆくのは初めて観ました。これまた、斬新な宙乗りです。 

 
 いろいろな工夫を凝らした演出によって、今まで観たことも無い「四谷怪談」に出逢いました。ただただ幽霊を楽しんでいた「お岩さん」とは違って、歴史の闇に呑み込まれた陰惨な人間模様を描いた「お岩さん」にますます興味津々です。







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テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

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 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

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