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通し狂言「伊勢音頭恋寝刃」〜国立劇場〜



 雲一つない秋晴れで、こんな日に観劇とういうのもちょっともったいない気がします(笑)。

国立劇場


伊勢音頭ポスター 


刀剣 


 今月「国立劇場」では、『通し狂言 伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)』が上演されています。この演目の通し上演は、なんと五十三年振りだそうです。しかも、国立劇場では初の上演というのもビックリです。

 この物語は、寛政八年(1796年)五月、伊勢国古市の遊女屋・油屋で起こった地元の医者による殺傷事件を題材にして作られた作品で、阿波国の大名家のお家騒動を背景にして、遊女との恋を絡めて上手に描かれています。
 歌舞伎では、大詰めの部分『油屋』の一幕で上演されることがほとんどです。

 名刀と折紙(鑑定書)を入手するため奔走する主人公・福岡貢役を中村梅玉が勤めます。貢というのは、二枚目で人情味があり、何とか主筋の万次郎のために骨を折る献身的な人です。柔らかさと力強さの両面を持ち、名刀の妖気によって何人もの人を殺してしまう狂気を「通し」で演じるのは、かなり難しい役柄です。この役を梅玉は、自然体で全く違和感もなく、貢そのものになりきっているように演じています。梅玉は、品があって、声に艶もある好きな役者の一人です。今回は、その良さを十分に生かした素敵な貢です。

 よく上演される『油屋』の場面では、仲居の万野(中村魁春:梅玉の弟)とのやりとりが見事です。少しづつ追い詰められ、恋仲の遊女・お紺(中村壱太郎)にまで愛想尽かしをされ、満座の中で恥ずかしめられ貢の怒りと感情が次第に高まっていく様子が圧巻です。色気があって、底意地の悪さを絶妙なさじ加減でたたみかけていく魁春の万野は、絶品の出来栄えです。
 恋仲のお紺を演じる壱太郎が、予想以上の素晴らしさに目を見張りました。今まで、「ちょっと〜? まだまだ・・・」と思っていた女形ですが、今回は、この満座の中で匂い立つような色っぽさと抑えた演技が見事な華を添えています。

 また、特筆すべきは五十三年振りの上演となった『太々講』という喜劇の場面です。三枚目の敵役・正直正太夫(中村鴈治郎:坂田藤十郎の長男、壱太郎の実父)が、おかしみ溢れる役柄で何度も笑えます。面白くて、お茶目な役は、鴈治郎はんにとっても良く合っています。笑わせる役をできる役者が少なくなってしまった現在、本当に貴重な存在です。
 『太々講』は楽しい場面なので、もっと上演してほしいと強く思いました。

 今回は、「通し狂言」ならではの味わい深い舞台でした。場面場面の面白さと、その時々で変化する感情の動きを同じ役の中で演じる難しさを感じることができました。「通し」で上演してもらうことによって、物語の理解がさらに深まったり、その役柄の人間性がより浮き彫りにされてくるものだと思います。次回『伊勢音頭恋寝刃』を観る時は、今までとちょっと違う見方ができるような気がします。



国立劇場 10月歌舞伎公演
  通し狂言 伊勢音頭恋寝刃
    序幕  第一場 伊勢街道相の山の場
        第二場 妙見町宿屋の場
        第三場 野道追駆けの場
        第四場 野原地蔵前の場
        第五場 二見ヶ浦の場
    二幕目     御師福岡孫太夫内太々講の場
    大詰  第一場 古市油屋店先の場
        第二場 同   奥庭の場






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テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:南十字星
 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

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