『愛の伝説』〜ボリショイ・シネマ〜
ボリショイ・バレエ団の2014ー2015シーズンのライブビューイング・シネマもいよいよ最終に近づいています。6作品全部見たかったという思いが、どんどん募ってゆくばかりです。そんな中で今回は初めて見る作品、『愛の伝説』です。

『愛の伝説』は、1961年キーロフ劇場(現マリインスキー劇場)で初演されました。アリフ・メリコフの音楽にのせたユーリー・グリゴローヴィチの振付作品です。10年ぶりに上演されたそうです。
まず目を引くのは、全ての振り付けがオリエンタルでエキゾチック、ペルシャ風の雰囲気です。特に手と手首の動きが独特で難しそうです。振付には全て意味があると思うのですが、何度も出てくる特徴的な動きの意味をいろいろ考えてしまいました。胸の横から手を差し出したり、指でキツネのような形を作ってふったりと意味深な動きが多いです。(振付の解説書があると嬉しいですけどね〜)
第1幕は、ショスターコーヴッチの交響曲第五番『革命」に似た旋律が続く中、男性ダンサー達の力強くユニークな動きにひきつけられます。
主役の女王:メフメネ=バヌーを踊ったマリーヤ・アラシュは、エキゾチックで大柄な容姿がとても印象的です。独特なオーラが舞台を包みます。衣装の色も女王は青→赤→黒へと変わり、妹のシリンの白い衣装と対照的で、性格や雰囲気を色の効果で表現しています。シリンを踊るアンナ・ニクーリナは、可憐でキュートな容姿が白い衣装で一層引き立てられ、女王との対比が見事です。
照明の使い方、切替えの演出は現代的でドラマティックです。スポットライトの使い方は、特に主役3人を効果的に際立たせ、ストーリー性がしっかりしているので演劇を見ているような舞台でした。
各々の配役がマッチしていて、素晴らしかったです。もし、女王のメフメネ=バヌーをザハーロワが演じていたら、もっと合っていてもっと格調の高い舞台になったと思います。
フェルハド役のデニス・ロヂキンは、容姿もテクニックも完璧なのですが、オーラがちょっと足りないように感じたのは私達だけでしょうか?
個人的な愛を犠牲にしても、民衆の幸せのために困難に立ち向かって行くという選択をしたラストは、いかにもソビエト連邦時代に作られた作品らしいですが、最後の幕間でインタビュアーがちらっと触れた、民衆が苦しんでいた「水=自由」というキーワードが印象的でした。当時の芸術家達は、『革命』や『愛の伝説』の裏に思いを込めたのかもしれません。そういう思いで観ると、また違った深みがある作品です。
『愛の伝説』は、初演からまだ50年余りですが完成度の高い作品です。自分たちと同時代にこんな名作が生まれたことを思うと感慨深いです。これからも名作として残っていくと強く思いました。
年末には、マリインスキーも来日し「愛の伝説」を上演します。ロパートキナの「白鳥」も楽しみにしていますが、「愛の伝説」も観たくなってきました。
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