国立劇場 十一月歌舞伎
ハワイから帰ってきて、11月の舞台予定が目白押しでブログを書く暇もなく滞ってしまいました。
観劇記も当ブログの大切な記事なので、押せ押せになりながらもアップしていきます。
連休初日の22日は暖かい秋晴れの中、国立劇場の歌舞伎公演へと向かいます。

気持ちのいい天気なので、国立劇場の正面お堀側に行ってみたら、こんな案内があるのを初めて知りました。ほとんどの人は裏から入ってくるので、気づかないと思います。

そして、皇居桜田濠の街路樹は色づきはじめ秋の日に輝いていました。随分たくさんの人がジョギングしているのに驚きました。

国立劇場前庭には、珍しい植物が数多く記念樹として植えられていてちょっとした植物園です。これは、尾張椿の名品「玉霞」と名札がついていました。花も名も美しいです。雄しべを抱き込むようにして咲く珍しい椿です。
今月の国立歌舞伎公演は、『通し狂言 伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』です。
仙台伊達家のお家騒動「伊達騒動」を題材にしたもので、大名家の跡継ぎを巡って繰り広げられる激しい権力闘争のお話です。
『伽羅先代萩』と言えば、若君鶴千代を命がけで守る乳人政岡(まさおか)が最も重要な役柄で、当代の坂田藤十郎の当たり役です。今回、通し狂言ではこの政岡を前半を藤十郎の次男・中村扇雀が、後半を藤十郎が勤めました。藤十郎は昨年五月に歌舞伎座の杮茸落公演でも政岡を見事に勤めています。あれから一年半ですが、80歳を超える藤十郎の衰えを感じさせるものになってしまいました。前半に同役を勤めた扇雀で「政岡」を通しで演じてもらいたかった気がします。
この舞台で存在感を現した役者が三人います。まず悪役仁木弾正役の中村橋之助です。ここ一年急激な成長を遂げた橋之助の軌跡を見る思いがしました。座頭で名優の中村勘三郎を失い、続いて兄の中村福助が病気療養中一年間不在の中、庇護される立場から庇護する側へと立場も責任も一変し、役者として一皮むけたような最近の舞台の活躍を象徴するものでした。
二人目は、二役勤めた中村梅玉です。特に細川勝元役は、梅玉の柄にピッタリの役ではまり役そのものです。芸も品格もあり、この人の存在の大きさを忘れてはいけないと改めて感じさせられました。
三人目は、片岡孝太郎です。沖の井という同じ家中の重臣の妻役ですが、実に良い味を出しています。非常にサバサバとした歯切れの良いものの言いように、会場からこの日一番の拍手をもらっていたように思います。この人が、役にはまると不思議な輝きを放ちます。父親が歌舞伎界きっての二枚目片岡仁左衛門であるのに、その容貌を受け継いでいないことが残念と思うことがしばしばありますが女形として、地道に頑張っています。はまり役にあたった時の孝太郎に出会うのは、本当に楽しみです。何かしら、スカッとした爽快な気分が残るのです。
国立劇場は、観劇料金もプログラム代も歌舞伎座に比べて安く、客席からの舞台が見える格差が歌舞伎座ほどありません。
まさに「庶民の味方」というところです。いろいろな座席を試してみることができます。
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