fc2ブログ

追善公演は大成功






 十七世、十八世中村勘三郎追善公演の「昼の部」はよく参考にしている演劇評論家の方の劇評が良くなかったので、ちょっとがっかり感を感じつつ観劇に臨むことになってしまいました。

 自分の目で観た結果は・・・

野崎村
 「お染久松物」の代表作である『新版歌祭文』は、安政9年(1780)に人形浄瑠璃として初演されました。歌舞伎では『野崎村』が独立して上演され、とても人気のある演目です。

 丁稚久松(中村扇雀)をめぐって、田舎娘お光(中村七之助)と町娘お染(中村児太郎)の対照的な恋が描かれています。
 七之助は、田舎娘というよりも、ちょっとオキャンな都会の娘という感じはしますが、恋い慕う久松のために自ら身を引く女の切なさを巧く演じています。父親役の坂東彌十郎との呼吸もピッタリで、親子関係の情愛を見事に表現しています。

 幕開きの義太夫「〽︎ あとに娘はいそいそ」の後の一連の所作では、鏡台を出して身繕いする重要な場面が、手鏡による省略版になっていたのが残念です。まもなく女房になる自分の姿を想像しながら眉を紙で隠し(当時は、結婚すると眉毛を剃っていました)、その姿を鏡で見てはにかむという女心を表す重要な演出だと思うのですが、何故ここを省くのか?ここだけがちょっと残念でした。



伊勢音頭 
 『伊勢音頭恋寝刃』は、実際に伊勢で起こった殺傷事件を劇化して、寛政8年(1796)に初演されました。

 主人公の福岡貢(中村勘九郎)は、「ぴんとこな」と呼ばれる役柄で和らかみと強さ求められる難しい役ですが、かなり頑張っていると思います。
 特筆すべきは、坂東玉三郎の仲居万野です。意地の悪い憎々しさの表現力が見事です。目の使い方、体の動き、憎々しさの中にある色気・・・玉三郎の芸の広さ、奥行きを発見できたような気がします。

 と言う訳で、「昼の部」の出来栄えは決して悪いものではありませんでした。むしろ、良い舞台で十分楽しめる演目でした。
 観る目を養うということは、劇評をそのまま鵜呑みにすることなく、自分の目で確かめて、自分で評価することが重要であると思いました。好みや贔屓の役者とかは、各人異なるのでやはり数多く観ないと、わからないものです。(笑)



 昼の部では、中村扇雀の立役(野崎村の久松)と中村橋之助の女形(伊勢音頭の遊女お鹿)という珍しい役を観れたのもお楽しみの一つでした。

 十月の追善興行は大成功だったと思います。






十月大歌舞伎 歌舞伎座 昼の部
  十七世中村勘三郎二十七回忌、十八世中村勘三郎三回忌追善
 一 新版歌祭文
    野崎村
 二 上 近江のお兼
   下 三社祭
 三 伊勢音頭恋寝刃
    油屋店先、同奥庭



スポンサーサイト



テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

南十字星

Author:南十字星
 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

09月 | 2014年10月 | 11月
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


FC2カウンター
フリーエリア
ポチッと押してもらえると励みになります。  ↓
最新記事
最新コメント
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
1318位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
演劇
72位
アクセスランキングを見る>>
リンク
検索フォーム