十七世、十八世中村勘三郎追善 大歌舞伎
今月の大歌舞伎は、十七世中村勘三郎二十七回忌、十八世中村勘三郎三回忌の追善公演です。
この追善公演は、十八世勘三郎が生前、十七世の二十七回忌追善として計画していたもので、まさか本人も自分の追善公演になるとは思っていなかったことと思います。
歌舞伎座に入ると正面左右に二人の写真が飾られ、会場全体にお香の香りが立ちこめていました。
まずは、初日「夜の部」からの観劇です。


『菅原伝授手習鑑 ー寺子屋ー』は、時代物の傑作で年に一度は上演される名作です。重厚な時代物なので、ベテラン歌舞伎役者が演じることが多い演目です。今回は、中村勘九郎、七之助が中心になって頑張りました。勘九郎の目力は、なかなかなもので時代物の演目も十分にこなすだけの力量と素質を感じました。脇を片岡仁左衛門、坂東玉三郎が固め、緊張感のある追善にふさわしい素晴らしい初日でした。

『鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)』は、三島由起夫が御伽草子を題材にした作品で、昭和29年に歌舞伎座で初演されました。
鰯賣の猿源氏(さるげんじ)が、大名しか相手にしない傾城蛍火(ほたるび)に一目惚れするという単純な話ですが、これは本当に面白いです。初めて観る演目ですが、勘三郎そっくりな声と所作の勘九郎が十八世勘三郎と重なり、それぞれの役者が勘三郎への熱い思いを演技に込めた舞台です。大笑いしたり、「胸がキュン!」としたり、勘三郎の舞台もぜひ観てみたかったと思いました。それはできないので、せめてもう一度この舞台を観に行きたくなりました。
ポスターは、夫婦になった二人が仲睦まじく『鰯こうエーイ♪』と鰯賣の売り声をかけながら花道を引っ込む名シーンです。勘三郎を偲んで少し、うるっときました。
勘九郎と七之助の成長振りを父と祖父、二人の勘三郎はきっと喜んでいることでしょう。
十月大歌舞伎 歌舞伎座 夜の部
(十七世中村勘三郎二十七回忌、十八世中村勘三郎三回忌追善)
一 菅原伝授手習鑑 寺子屋
二 道行初音旅 吉野山
三 鰯売戀曳網
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