師走の国立は〈忠臣蔵物〉
歌舞伎座では、ご存知のとおり忠臣蔵本編『仮名手本忠臣蔵』を通し狂言で上演しておりますが、国立劇場では「知られざる忠臣蔵」と銘打って、忠臣蔵外伝を上演しています。
十二月は、この際どっぷり「忠臣蔵」に浸かろうと思い・・・正直、余り期待せずに国立劇場に行きました。ところが、期待を良い意味で大きく裏切る素晴らしい舞台です。
「知られざる忠臣蔵」

◎第一演目は『主税と右衛門七(ちからとえもしち)』
赤穂浪士四十七士のうち、十代で討入りに参加した大石主税と矢頭右衛門七の友情と討入り前夜の不安と動揺を淡い恋を織り交ぜ、そんな二人を温かく見守る大石内蔵助の苦悩を情緒豊かに描いた作品です。
この作品は、昭和34年初演で現在の松本幸四郎、中村吉右衛門兄弟のために書かれた新作歌舞伎でした。心温まる傑作なので、もっと上演して欲しいと思いました。
◎第二演目は『弥作の鎌腹(やさくのかまばら)』
播磨屋(中村吉右衛門家)の家の芸(秀山十種)のひとつで、初代吉右衛門の当たり役を当代吉右衛門が初役で挑みました。
義士の千崎弥五郎の兄で、正直者の百姓弥作が主人公となる「忠臣蔵外伝」の代表作です。
弥作は、帰郷した弟弥五郎から討入りの計画を打ち明けられ、固く口止めをされますが、義理ある代官からの弟の縁談を断るため秘密を漏らしてしまいます。それが悲劇へと・・・。正直者で人の良い弥作のつつましくも穏やかな幸福な日常が、討入りという大事に巻き込まれ壮絶な最期を遂げる作品です。
実直な心根と弟を思う兄の優しさを演じる吉右衛門は、まさに円熟期を迎えた卓越した演技で魅せます。
今回は、花道すっぽん脇の席でしたが撃った鉄砲は火薬の匂いがしました。目の前で食い入るように見ていても、その仕掛けはわかりませんでしたが、本物にこだわる歌舞伎の凄さを肌で感じた瞬間です。
◎第三演目は『忠臣蔵形容画合(ちゅうしんぐらすがたのえあわせ)』
「仮名手本忠臣蔵」の大序から七段目まで舞踊化した作品です。
各段が機知に飛んだ着想で描かれ、三人上戸、盆踊り、早替わり、人形振りの趣向で彩られています。一味違う面白さで新しい振り付けと作曲により約60年振りの上演です。
「こういう仮名手本忠臣蔵の描き方もあるのか!」という驚きと、盛りだくさんの歌舞伎の技と巧みが織り込まれた宝箱のような楽しい舞台です。
くろごちゃんお目見え

日本一目立たないマスコットとして活躍中です!「ゆるキャラグランプリ2013」で、全1580体中326位だそうです。目立たない割には、なかなかの健闘ではないでしょうか。
くろごちゃんの名刺

くろごちゃんから名刺もらっちゃいました ♪ 実は、この名刺いくつか種類があります!
「忠臣蔵」には、本伝、外伝、銘々伝といろいろあります。歌舞伎にも沢山の「忠臣蔵」があって、まだまだ見ていないもの、なかなか上演されないものなど、奥が深いなぁ〜と思います。
国立劇場は、普段上演されない素晴らしい演目を見つけ復活させてくれます。聞いたことのない題名が多いのもそのためです。期待をはるかに超える作品に出逢えるチャンスがあります。今後も国立劇場の舞台は、目が離せません。
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