国立劇場は勉強の場所!
今月は、国立劇場では『通し狂言 伊賀越道中双六』が上演されています。歌舞伎座でも昼夜「通し狂言」なので、ちょっと体力を要する演目が続きます。
「クロゴちゃん」

国立劇場のゆるきゃら「クロゴちゃん」 運が良いと、歩いている「クロゴちゃん」に会えるのですが、今回は会えなくて残念!

荒木又右衛門が義弟の助太刀をした「伊賀上野の仇討」を題材にしたのが『伊賀越道中双六』です。「赤穂浪士の討入り」や「曽我兄弟の仇討」と並ぶ『日本三大仇討』の一つです。
敵討に至るまでの過程を道中双六に見立てた趣向で描いた作品で、全十段から成る大長編です。今回は「通し狂言」とはいうものの、全段を上演することは不可能で半分弱といったところでしょうか。昔の芝居は、夜明けから日暮れまで、それこそ一日中通しで上演されていたそうで、現在とはかける時間が全然違います。その結果、当然端折っていくことになるのですが、複雑なストーリーの場合は話しの筋がよく分からなくなることもしばしばです。
国立劇場では、この弊害を補うためなるべく通しに近い形で上演しています。役者にとっても、観る側にとっても勉強のために国立劇場は大切な場所になっています。
最も多く上演される『沼津』の幕は、作品としても秀逸で義太夫狂言中の傑作場面とされています。通し狂言によって、この場面の背景がわかり人間ドラマが浮き彫りにされていきます。
以前、平成中村座で『沼津』を観た時は、中村勘三郎と片岡仁左衛門のコンビで印象に深く残る名舞台でした。今回は、坂田藤十郎と中村翫雀(藤十郎の長男)、中村扇雀(藤十郎の次男)の親子で、同じ舞台に立ち素晴らしい舞台を魅せてくれました。
荒木又右衛門に当たる役を中村橋之助が、勤めましたがいずれ「中村芝翫」の名を継ぐのかなぁ〜、という思いで眺めていました。それだけ橋之助の存在感が、最近富みに増してきたように思えるのです。
舞台右手にスロープが。。。

沼津の場では、会場内の通路を道中に見立ててお客さんを楽しませる趣向になっています。舞台右手にスロープが設置してあり、ここから会場内を笑わせながら練り歩いたあと、左手の花道を使って舞台に戻ってきます。歌舞伎は、お客さんとの呼吸をとても大切にしているのでこのような趣向を凝らした演目がたくさんあるのも魅力の一つです。
お土産物売り場

能の面をあしらったアクセサリーをお土産物さんで見つけました。ネクタイピン、指輪、ペンダントなど・・・付けていたら、ちょっと怖いかも!? センスを疑われそうな気がしないでもない? もらったら、ちょっと困るお土産物? なんて、いろいろ考えちゃいました。
今回国立劇場が構成した「伊賀越道中双六」の切り口は、荒木又右衛門の件に絞った構成でしたが、物語の発端にあたる第一段も入れて貰いたかったなと感じました。昭和45年に「沼津抜き」の上演も試みたらしいので、これも一度見てみてみたいです。「沼津」がないと面白くないとは思いますが。
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