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吉右衛門渾身の名舞台「熊谷陣屋」


 昨日は新歌舞伎座の興奮で、肝心の演目の感想が少なかったので追記しておきます。

 「熊谷陣屋板絵」
熊谷陣屋板絵 
 


 最初の演目「壽祝歌舞伎華彩(ことぶきいわうかぶきのいろどり)」は歌舞伎座の新開場を祝う新たな外題で、正式には「鶴寿千歳」といいます。昭和天皇の即位の大礼の奉祝曲として作られたもので、テレビでも随分取り上げられていました。
 笛、小鼓三張、大鼓二張に箏が四面という豪華な囃子方です。歌舞伎のメインの音楽は三味線音楽で、能を歌舞伎化した演目では笛や鼓が使われますが、箏はなかなか聴くことができません。箏の音はとても上品で、「日本」を感じさせてくれる祝祭にぴったりな音色です。
 『ありがたや 道昭らく 人は皆 和らぐ御代に生まれ会いて』
という詞章には「昭和」という元号が読み込まれています。
 平安時代を思わせる衣装に身を包んだ宮中の男女達と鶴が平安を寿ぐ舞を舞う姿はただただ美しく、祝祭一色の舞台に「歌舞伎座が戻ってきたんだなぁ」と会場全体に喜びが満ちていくような舞台でした。
 次次代を担う四組の若々しい役者達が誇らしげで舞っていたのが印象的です。


 二番目の演目は、十八世中村勘三郎に捧ぐ「お祭り」です。赤坂日枝神社の山王祭を素材とした清元による舞踏です。中村座の役者が勢揃いし、鳶や芸者衆の扮装で次々に踊りを披露します。三津五郎を筆頭に、福助、橋之助、彌十郎、獅童、勘九郎、七之助、亀蔵、巳之助と並ぶと中村座は役者揃いで、一致団結して座頭の勘三郎を失った危機を乗り切ってくれそうな気がします。頑張れ!中村屋!
 

 最後の演目で、この日のメインは、「熊谷陣屋」です。
 作品名称は「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」といい、源平「一の谷の合戦」を舞台にした大きな二つの物語によって構成された全五段の長編ものです。その三段目に当たるのが「熊谷陣屋」になります。
 本来この名作を味わうには、全五段の内、初段大序、二段目の口と中、三段目と見て行かないと「なぜ、熊谷次郎直実は平敦盛を助けるため我が子を犠牲にしたのかという制札の謎」の部分がはっきり分からないのですが、時間の関係からか、ほとんどの上演は「熊谷陣屋」単独での上演となっているのが残念です。
 私達も通しで観たのは一回だけで、昨年三月国立劇場で團十郎の熊谷直実でした。国立劇場は通しでやってくれることが多いので、勉強のためには貴重な機会なんです。
 今回の熊谷陣屋は、吉右衛門の気迫のこもった演技が素晴らしく、歴史に残る名演になるだろうと思います。特に幕切れの花道での名演は忘れられません。この幕切れには四つの型がありますが、吉右衛門は熊谷一人が花道に出る九代目市川團十郎型です。
 花道七三で僧侶姿になった熊谷が、我が子を犠牲にした悲哀を嘆き、世の無情を儚み「夢だ、夢だ〜」と叫びながら笠で顔を覆いうずくまる場面は心に焼き付きます。
 出来たら、もう一度、吉右衛門の渾身の舞台を観たいものです。

 「熊谷陣屋」は歌舞伎の時代物を代表する名作の一つですが、初心者の方にはなかなかお薦めしにくい作品でもあります。名作といわれる時代物は竹本による義太夫で語られることが多く、台詞のほとんどは聞き取りにくい上、ダイナミックな動きも少なく、ただただ眠気との戦いになります。観劇には珈琲などを沢山呑んで、気合いを入れて臨んでみてください。





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 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

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