新橋演舞場の花形歌舞伎(夜の部)
歌舞伎座建替え期間中の三年間、通い続けた新橋演舞場での歌舞伎もいよいよ残すところ10日となりました。
昨日は、三月花形歌舞伎(夜の部)に行って来ました。
「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」

最初の演目『一條大蔵譚』は、今回初役で市川染五郎が演じます。曾祖父の初代中村吉右衛門が得意とした役で、叔父の吉右衛門からみっちりと指導を受けて挑む大役です。今回この役にかける染五郎の意気込みは、並々ならぬものがあり練習を積んだ跡がはっきりと感じられるものでした。
もちろん、まだまだ吉右衛門には及ばないものの初役で演じる染五郎の舞台に立ち会えたことは、今後の成長振りを観ることができる楽しみも増え、本当に良かったと思います。
「二人椀久(ににんわんきゅう)」

染五郎は、『二人椀久』の椀屋久兵衛役も初役でした。菊之助と二人で踊る舞踊です。
染五郎は、昨年勘九郎の襲名公演の「弥生の花浅草祭」で、勘九郎と二人で舞踊をやりました。その時の印象で、踊りが雑で下手なイメージが残ってしまいました。しかし、今回はそれを全て払拭しても余りある素晴らしい舞台でした。
踊りの名手とも言える菊之助との呼吸も良く合っていて、儚くも幻想的な美しい舞踊を艶やかに演じていました。たぶん、染五郎の舞踏の現時点での最高傑作といえるでしょう。
歌舞伎役者は、日々鍛錬を積み進歩してゆくものです。一つの舞台、演目で判断して先入観で観てはいけないものだと強く反省させられた気がします。
大怪我から復帰し、大看板の勘三郎と團十郎を失った今、歌舞伎にかける思いが以前とは比べ物にならないものがあるのかもしれません。その思いは、海老蔵をはじめ今月演じている花形役者の舞台から、ひしひしと伝わってきます。染五郎のこの舞台はぜひ、一等席でもう一度観てみたいものです。
「本日のお供」

銀座三越で購入した「桜餅」です。桜の葉を上下から包んだ珍しいもので、中は道明寺です。桜の葉の香りが、咲き始めた桜を運んできてくれたみたいです。好みとしては、長命寺の江戸風桜餅が好きなんですが、三越ではなかなか手に入りません。三越は、洋菓子が中心で和菓子にあまり良いものがない感じがします。
実は、今回(夜の部)の歌舞伎は予定していませんでした。急に、やっぱり行こう!と思い立ってチケットを取って行きました。行って本当に良かった!素晴らしい舞台を見逃すところでした。
歌舞伎は、一回でも多く一つでも多くの演目を観ることが重要だと思います。観る目を養うのも、役者の巧さを発見するのも数観ることが一番なのだと、つくづく感じる一日となりました。
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