染五郎復帰の大歌舞伎
昨年8月に公演中セリから転落して大けがをした市川染五郎の復帰公演に行ってきました。
松本幸四郎の口上でも染五郎の復帰をとても喜んでいる親の思いが、伝わってきました。
口上が終わると、舞台上の「浅葱幕」が「チョン!」という柝(き)の音で「振り落し」となり、舞台は一瞬にして、桜が咲き誇る吉野山へ。歌舞伎ならではの演出です。最初の演目は、『義経千本桜 吉野山』で、染五郎と福助の踊りです。ケガの影響は全く感じさせない出来映えで、まずは一安心といった感じです。

清元の語りだしにより花の吉野山にひきこまれてゆくうちに、福助の静の出。七三での踊りから滑らかに清らかに舞いながら舞台中央に移動していきます。福助は巧いです。ここまでの一連の流れに見惚れてしまいます。次に、花道スッポンから染五郎狐忠信の登場です。スッポンからの登場は、人間以外のもの(幽霊、妖術使い、狐等)というのが歌舞伎のお約束。染五郎のハイライトは、竹本の義太夫語りが入るところから始まります。復帰後初舞台で気迫のある踊りを披露してくれました。
次の演目は『通し狂言 新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)』
通常は後半の「魚屋宗五郎」から上演されるのがほとんどですが、今回は事件の発端である「弁天堂の場」から通しで観られて筋が良くわかりました。
「皿屋敷物」は、「魚屋宗五郎」のほか「番町皿屋敷」「播州皿屋敷」など数多くあるそうです。
松本幸四郎が宗五郎役を演じましたが、幸四郎の世話物を観るのは初めてで、菊五郎や勘三郎の宗五郎とは全く違う味わいのあるものでした。今まで知らなかった幸四郎に出会えたような気がします。

これは、劇場内に飾られていた『日生劇場の舞台側から見た様子』の写真です。日本一の劇場空間だと思います。こういう劇場が日本にあることを誇らしく思います。

天井の曲面には、色付きの石膏に2万枚と言われるアコヤ貝が貼ってあり、幻想的な雰囲気を醸し出しています。

三階座席から見た舞台の雰囲気です。一番後ろの席ですが、歌舞伎座や新橋演舞場と違って花道も半分くらい見えてとっても見やすい劇場です。海中の竜宮城にある舞台を観ているようだと思いませんか?天井が水面で、劇場空間が海中です。左側に丸い窓のようなものがありますが、フジツボのような形をしています。
一昔前までは、劇団四季の本拠地でよく足を運びました。

明日が、千秋楽です。今回は急に来ましたが、来て良かったなぁ〜と、思います。
染五郎の完全復帰も確認できましたし、何と言っても幸四郎の今まで気付かなかった世話物演技を観ることができたことは新たな発見です。
最近、中村亀鶴がメキメキと上達して頭角をあらわしてきた感じがします。
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