旭岳温泉周辺の花々
旭岳ロープウェイの麓駅周辺にも、なかなかワイルドな自然探勝路がたくさんあります。探勝路といっても、ほとんど手つかずの自然のままなので、ちょっと大変です。登山靴がないと歩けません。森林限界を超えた旭岳周辺の植物とはまた違った、亜高山に咲く植物達を見ることができます。

ニッコウキスゲに良く似た「エゾゼンテイカ(蝦夷禅庭花)」。ゼンテイカは、咲いている場所によって名前が違うだけで同じものという説と、多少の違いがあり区別すべきという説があります。ニッコウキスゲに比べて、花柄が短く花びらが厚いというのが区別説の理由だそうですが、いずれにしても北海道に咲くものを「エゾゼンテイカ」と呼んでいます。山中に咲く山百合は気品がありますね。

葉が6枚の輪生に見える「ゴゼンタチバナ(御前橘)」です。随分と気高い名前だなと思ったら、白山の最高峰「御前峰」からの命名だそうです。

ちょっと変わったフォルムの「ショウジョウバカマ(猩々袴)」です。名前の「猩々」は、中国の伝説上の動物で、酒を好み赤い顔と赤い毛をしています。能にも「猩々」というのがありますが、ちょぅど髪の形がこの「ショウジョウバカマ」に似ていますね。

「ミヤマアズマギク(深山東菊)」。高山性で関東地方に多く咲く菊という意味の名前です。うっすらと色づいた紫色と黄色のコントラストが綺麗です。

旭岳ロープウェイの真下にある湿地に咲いていた「オオバタチツボスミレ」です。スミレが7月になっても咲いていたので感動しました。最終日に気がついたのですが、もっと早く知っていたらもう少し丹念にスミレを探してみたかったです。「日本のスミレ」というスミレだけの図鑑が出来ているぐらい日本はスミレ大国で、愛好者もたくさんいます。世界中のスミレフリークの憧れの地なんです。
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高山植物はまだまだ続きます
見頃を迎えた、旭岳姿見の池周辺で見られる高山植物の残りを一気にアップします。
「キバナシャクナゲ」

「イワブクロ」

「ウコンウツギ」

「エゾコザクラ」

「カラフトイソツツジ」

「チシマフウロ」

「ミヤマクロスゲ」

いずれも独特なものが多く、高山域や寒冷地の方が綺麗な花が多い気がします。
北海道編はあと2回予定しています。
次回は亜高山と言われる麓の植物、そして最終回は昆虫編です。
可憐な似た者どうし
高山植物は、強風の中で生き抜くため小さなもの達が多いですが、ここにあげる可憐な壷型や釣鐘型の花には特に惹かれます。どれが好みですか?一堂に並べてみました。
「アオノツガザクラ」

「エゾノツガザクラ」

「コエゾツガザクラ」

「ツガザクラ属」はツツジ科の植物ですが、「アオノツガザクラ」と「エゾノツガザクラ」が混在する場所では、自然雑種と思われるものが見られるようです。この「コエゾツガザクラ」もその一つで、色が淡く、表面が無毛です。
「ジムカデ」

「コケモモ」

「イワハゼ」

「コケモモ」と「イワハゼ」は高山域でなくとも見られます。「コケモモ」の実から作ったジュースは伊豆の名産品にもなっています。
どれも1cmにも満たない小さな花ですが、特に「ジムカデ」は小さく、5mm程の大きさです。自然雑種のことは後で知ったので、もっと丹念に探せば変種が見つかったかもしれません。
高山植物「チングルマ(珍車)」
高山植物とは、森林限界である標高2,500m以上の高山域に生息し氷河期との関係が深い植物です。2,500m以上ですから、相当な登山をしないと見られない訳ですが、緯度の高い北海道では標高1,700mが森林限界となり、旭岳ロープウェイを使って楽々と見ることができます。花を愛でる人達には有名な人気スポットになっています。
珍しい植物がたくさんありましたが、表大雪の大群落で一番最初に目につく「チングルマ」から始めていきます。


白い花に黄色の雄しべと雌しべが印象的です。よく見ると、花びらの中央部も一枚一枚黄色く色づいているのが分かります。

チングルマ。和名は、珍車。子供の風車に見えたことから稚児車転じて珍車というそうですが、なぜこの花が風車に見えるかというと、花期が終わってからの変化に理由があります。花から羽飾りが出来るまでを順番に追ってみます。



中央部に羽毛状の花柱が残り、羽飾りのようになります。この羽飾りがもう少しすると、上から見て車輪のように見えるのが稚児車の由縁です。秋には真っ白な綿毛のようになるようです。

羽飾りの一本一本の先には種子が付いています。一本抜いてみました。秋になると風に吹き飛ばされて種子を遠くまで運んでくれます。
本州では、木曽駒ヶ岳千畳敷、立山室堂、乗鞍岳などで見られるようです。
日本の固有種「シラネアオイ」
今回の北海道で観察できた中で、なんといっても『ナンバー1』は、日本原産植物で日本の固有種であり、絶滅危惧種に指定されている「シラネアオイ」です。
「シラネアオイ(白根葵)」

分類上、1科1属1種という特別な地位をいただいている正真正銘の日本の特産種「シラネアオイ」です。生物の分類は「界・門・鋼・目・科・属・種」というふうに大まかには分類されますが、シラネアオイ科の中では唯一で、他に類似の種がまったく存在しないという意味です。キンポウゲ科に属するという分類もあるようですが、最近は独立してシラネアオイ科として分けていることが多いようです。
和名は、日光白根山に多く、花がタチアオイに似ていることからついたようです。北海道と本州中部地方以北の日本海側の高山で生えるそうですが、北海道は気温が低いため標高の低いところでもみられました。
「エゾエンゴグサ」

ひと際明るいコバルトブルーが目をひく「エゾエンゴグサ」です。形は生田緑地にもあるケマンに似ていますが、花の密集度と葉が違います。本州北部の日本海側と北海道に生育します。雪解け後すぐに咲き始める早春の花で、これもスプリング・エフェメラル(春の妖精)と呼ばれています。
「エゾシモツケ」

北海道と本州下北半島にのみ分布する「エゾシモツケ」です。雪のような白い花がとても綺麗です。
「マムシグサ」

北海道から九州まで分布するみたいですが、生田緑地ではみられません。茎にある斑な模様がマムシの皮膚の模様に似ているので「マムシグサ」の和名となったようです。そう言われてみればマムシの皮膚に似てなくもないです。
「ライラック」 この時期の北海道といえばこの花です。


今年の北海道はほんとうに寒かったようで、「札幌ライラック祭り」に間に合わず、開花は祭りが終わってからだったそうです。関東の桜とは随分違いますね。
ライラックの開花が遅れたお蔭で、桜と梅とツツジとライラックを同時に見ることができました。