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ルジマトフの『海賊』(ミハイロフスキー劇場バレエ)




 新春バレエ第2弾は、ミハイロフスキー劇場ルジマトフの『海賊』です。


ルジマートフ


リベデフ 


花園 


 ファルフ・ルジマトフと言えば、『海賊』アリ役でコバルトブルーの衣装が強烈な印象で記憶の中にあります。全くバレエを観ていなかった頃でさえ、彼の名前とこの衣装だけは知っていたという程ですから、いかに凄かったかがうかがえます。今回、52歳のルジマトフがコンラッド(海賊の首領)役として出演し、自らの演出ヴァージョンによる『海賊』を披露しています。

 正直、「全盛期のルジマトフの『海賊』が観たかった!」という後悔が先にたちました。体型、容姿は年齢を感じさせませんが、跳躍、回転、動きの速さや切れは、年齢に勝てないことを証明しています。ただ、決めポーズの美しさだけが目立ち、逆に寂しさと時の流れの残酷さを際立たせてしまいます。バレエ界のスーパースターの在りし日の姿を求めるファンの気持ちが、伝わってきます。

 歌舞伎役者でも、バレエダンサーでも、最高の時期の最高のはまり役の舞台を観れることは、本当に幸せなことです。「早いもの勝ち!」って、思うのです。「今から観ても遅くないと思いたい一方で、やっぱり早いもの勝ち」だと思い知らされた瞬間でもあります。


 アリ役のヴィクトル・レベデフは若くて才能の片鱗を感じるものの、衣装はシャンパン色でコバルトブルーではなく、踊りの出番が少なくて添え物でしかありません。彼の踊りをもっと観てみたかったという気がします。

 メドーラ役のイリーナ・ペレンは、美人で踊りも美しいのですが卓越したものを持っている訳ではなく、何か?物足りなさを感じてしまいます。むしろ、美しいギュリナーラ役のアナスタシア・ソボレワの踊りの方が、手足が長くのびやかでて大きく優雅な印象を受けました。たぶん技術力の差がなく、衣装や踊りの場面によっては、ペレンを超えているのかもしれません。

 誰が主役なのか?はっきりしないまま、何となく華やかな舞台演出と衣装にごまかされたような印象が残ります。


 一昨年から始まった私たちの「バレエ祭り」は、ボリショイ・バレエのザハーロワに始まり、シネマ・バレエを含め、NYのアメリカン・バレエ・シアター、ニューヨーク・シティ・バレエからシュツット・ガルトetc.と、今回のミハイロフスキー劇場バレエで、ひとまず終了します。集中して観てきたお陰で、バレエ団による特徴、技術の高さの程度、衣装や舞台の演出の豪華さorシンプルさ、演出や振付による違いなど色々比べて観ることができました。自分たちの好みもわかり、今後のバレエ鑑賞の選択方針が見えてきました。
 我ながら充実したバレエ鑑賞ができたと思っています。生で観ないと感じられないもの、わからないものが沢山あります。その時々で感じた驚きや感動は、大事な宝物です。「出逢えて良かった!」と思えるダンサーを何人も見つけられたことは、とっても嬉しいことです。





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テーマ : バレエ
ジャンル : 学問・文化・芸術

ミハイロフスキー劇場バレエ『ローレンシア』



 新春バレエは、ミハイロフスキー劇場バレエ(旧レニングラード国立バレエ)が来日しています。まず最初のバレエは、『ローレンシア』からスタートします。





ローレンシア 


 実は、『ローレンシア』というバレエ演目は初めて耳にするもので、セット券で購入すると「とってもお得!」だったので観ることにしました。そんな訳で、ほとんど期待をせずにペレンが出るということだけは期待してましたが(笑)、気軽な気分で観ていました。

 『ローレンシア』は、スペインを舞台にした自由を求める民衆劇で、ソビエト時代のロシア・バレエの代表作です。初演は、キーロフ(現マリインスキー)劇場で、1933年3月に行われました。振付け演出したのは、キーロフ・バレエの名舞踊手ワフタング・チャプキアーニです。傑出した踊りの才能が振付けの才能と合致し、超絶技巧の連続する踊りです。この超絶技巧を踊るのが、ボリショイ・バレエから2011年にミハイロフスキー劇場バレエに移籍したイワン・ワシリーエフ(上記の写真のダンサー)で、初めての来日公演になります。

 イワン・ワシリーエフが出てきた瞬間から、驚きの連続です。まず、背が高くなく、通常王子様を踊るダンサーのような長くて細いスマートな脚ではなく、カエルのようなパンパンに張った太ももで短い足、引き締まっているがプリッとした大きなお尻。スタイルもスマートとは言えない全身筋肉で覆われたような筋肉質の体感が、バレエダンサーではなく別のスポーツ選手を感じさせます。
 踊り始めて、さらに驚きが続きます。まるでトランポリンの上で踊っているような、弾むようなバネのある跳躍や回転に目が釘付けになりました。力強い英雄的なダイナミックな動き、超絶技巧を楽々とこなし、男性的で野性味溢れる激しさに引き込まれていきます。少女マンガに出てくるような甘く美しい王子様ダンサーが多い中、全く異なる力強いヒーローのような圧倒的な存在感があって、心を揺さぶられる強烈な印象が残ります。
 これほどまでに、男性ダンサーが際立っている舞台も珍しいと思います。

 ローレンシア役のイリーナ・ペレンは、美しく可憐で高い技術力あります。後半のボロボロの衣装になって踊るシーンは、ジャンヌ=ダルクを彷彿とさせる神々しさを感じました。

 この舞台は、バレエの美しさを追究するというよりも理不尽な権力に立ち向かう民衆の力を表現した社会性の強いものだと思います。終盤、主役の二人が、ボロボロの衣装のまま闘い踊る様子は、今までイメージしていたバレエの世界を超えて、訴えかけてくるものがあります。「供に闘おう!」という気分になり、何かスカッとしたさわやかさと奮い立つような気力が沸いてくるような舞台でした。

 「こりゃ〜、春から良い舞台を観たな〜!」という感じで、とっても楽しめて新年最初の演劇にふわわしいものでした。






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ジャンル : 学問・文化・芸術

マリインスキーの『白鳥の湖』



 今年最後を飾るバレエは、『白鳥の湖』です。バレエは、やっぱり『白鳥の湖』に始まり、『白鳥の湖』に終わるのではないか?と思います。曲の素晴らしさ、芸術性の高さ、どれをとっても最高峰と言えます。いよいよフィナーレを飾るマリインスキーの『白鳥の湖』の開幕です。


白鳥の湖

 まずは、オデット/オディール役のウリヤーナ・ロパートキナについて語らなければはじまりません。

 ロパートキナは、まさにオデットのために存在するようなダンサーです。内に秘めた感情が、動きの一つ一つに込められ丁寧で正確な踊り。それでいてとても繊細な舞いです。上品で優美なロパートキナのオデットは、どの瞬間を切り取っても美しい姿です。
 ゆったりとした動きは、回転が遅いとも言えますが、遅い方が難しいと思えるようなバランス。ジャンプは高くないのに、とても大きく見える優雅な白鳥の姿。40歳を超えたロパートキナにしか踊れない、気品のあるオデットです。
 一方オディール(黒鳥)は、気高さが勝っていてクールさが際立っています。決して媚びない気位の高さを強調したオディールで、きりっとした美しさを感じます。

 次に特筆すべきは、コールド・バレエの見事さです。一人一人のバレエ技術の高さが成せる技でもあります。さまざまなフォーメーションの数々。円を描いて、流れるような美しい動き。第3幕の、白鳥と黒鳥が並ぶフォーメーションは、特に色使いの効果を最大限に生かした素晴らしいものです。

 舞台装置が安普請であることや、衣装のセンスに問題があることを差し引いても、マリインスキーの『白鳥の湖』は、最高の芸術作品と言えます。

 あえてボリショイ・バレエと比較するならば、ボリショイの豪華で華やかな舞台と衣装、そしてザハーロワの会場全体を圧倒してしまう程の表現力(妖艶で魔性の力を持った演技力)と、正統なバレエを重視し控えめな演出の中に技術と芸術性の粋を集めてギュッと閉じ込めたようなマリインスキーのバレエとは、双璧をなしています。好みは別として、バレエとしての芸術性の高さから言えば、マリインスキーの『白鳥の湖』の方が、上であると思います。

 ちょっと付け加えると、席が2階でちょっと遠かったせいかもしれませんが、男性ダンサーが埋もれたように目立たなかったのが不思議です。王子様は添え物のようであり、ロットバルトも陰が薄くて・・振付けのせいなのか?席のせいなのか?わからなくなっちゃいます。


 『白鳥の湖』で、マリインスキー・バレエの評価がグッと上がったのは間違いありません。
 どの演目を観るか? 誰を観るか?で、もっともふさわしい、自分の好みに合ったバレエを選べるようになったら最高です。











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マリインスキーの『ロミオとジュリエット』



 バレエの『ロミオとジュリエット』を初めて観たのは、実は今年の2月、ボリショイ・バレエのライブ・ビューイング・シネマです。セルゲイ・プロコフィエフの音楽と圧倒的な迫力とスピード感のあるボリショイ・バレエの「ロミジュリ」にすっかり魅了された衝撃が、忘れられません。
 幸運にも今年は、シュツットガルト・バレエ団とマリインスキー・バレエの『ロミオとジュリエット』を観ることができました。


ロミオとジュリエット

 ジュリエット役のクリスティーナ・シャプランは、もっともジュリエットにふさわしい若さと美しさを持ち合わせたダンサーです。長身で華やかな美貌、モデルや女優もできる容姿の持ち主です。表情も豊かで、先日観た『愛の伝説』のシリン役に比べて、はるかにのびやかで清楚な印象を受けます。この役に合っていると強く感じます。

 ロミオ役のティムール・アスケロフは、とてもバランスの良い体型のダンサーです。ただ顔が好みのタイプ ^^; でないので、なかなか感情移入ができませんでした。それとリフトが高いものが多かったことと、シャプランが重い(笑?)せいか、腕がプルプルしているのが気になっちゃいました。

 さて全体の感想ですが、正直「う〜ん?」とうなってしまいます。メリハリの無いロミオとジュリエットのデュエット、バルコニーの無いバルコニーの二人の踊り。華やかさが無い衣装、物足りない舞台全体の印象。無駄に思える場面や踊り。時間がやたら長く感じられるのも、どこか違うと感じてしまいます。

 舞台空間全部を使った迫力と駆け抜ける疾走感のグリゴローヴィチ版のボリショイ・バレエは、場面場面の曲と動きが良く合っていて強烈な記憶を残します。特に「キュピレット家の踊り」の格式と威厳のある踊りは、振付け、衣装の豪華さと言い、どれをとっても申し分の無い舞台です。また、ロミオとジュリエットのバルコニーのシーンは、幻想的で美しく、浮遊感と落下の中に危うい恋の情熱のほとばしりが表現された「初恋の甘酸っぱさ」を思い起こさせます。

 クランコ版のシュツットガルト・バレエの『ロミオとジュリエット』は、物語を重視し、登場人物の内面を掘り下げたような演出は、動き一つ一つに言葉と同じ意味があるように丁寧に描き出されています。感情の流れが、極自然に感じられ「ドラマティック・バレエ」の真髄に触れたような気がします。

 ラヴロフスキー版のマリインスキー・バレエは、ジュリエットが毒をあおって仮死状態になった後の場面が長く、ジュリエットの墓場の前の場面が重厚に描かれているなど、版によって演出が異なるのは、面白い発見でした。

 版の違い、人によって好みの差がかなりあるのも理解できます。私たちが3種類の『ロミオとジュリエット』で順位をつけるとすれば、

○第1位:ボリショイ・バレエ(グリゴローヴィチ版)
○第2位:シュツットガルト・バレエ(クランコ版)
○第3位:マリインスキー・バレエ(ラヴロフスキー版)

ということになります。




ナタリア・マカロワ 
 伝説のバレリーナ:ナタリア・マカロワ:ソヴィエト時代のレニングラードに生まれ、13歳でワガノワバレエアカデミーに入学。卒業後、キーロフ(現マリインスキー)バレエに入団し、すぐソリストに昇格。キーロフ・バレエ団のロンドン公演中の1970年イギリスに亡命。その後、アメリカン・バレエ・シアター、英国ロイヤル・バレエ団を中心に世界各国で出演。1985年頃からバレエ舞台から遠ざかり、舞台女優や振付家として活躍。
 この日、会場にナタリア・マカロワさんがいらしていて、その功績を会場全体で讃えていました。75歳とは思えない美しさです。



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マリインスキー・バレエ「愛の伝説」


 いよいよ今年の私たちにとってのクライマックス・バレエシリーズ、つまり「マリインスキー・バレエ」公演が始まります。まず最初に観た演目が『愛の伝説』です。


愛の伝説

 『愛の伝説』は、今年の3月にボリショイ・バレエのライブビューイング・シネマで観たので2度目になります。
 とても特徴のある手の動きとエキゾチックな舞台表現が強く印象に残っています。
 西洋の足の動きを重視した重心を上へ上へという踊りと、腰を落として重心を下へ落とし手の動きを重視した東洋の動きはとても対照的です。バレエやリバーダンスと歌舞伎舞踊やバリ舞踊では根本的に違います。この違いを西洋人から見て、デフォルメするとこうなるのかなと思うような独特な舞台が「愛の伝説」です。とても巧く作られた作品だと思います。

 マリインスキー・バレエの配役は、
  シリン(王女):クリスティーナ・シャプラン
  フェルハド(宮廷画家):アンドレイ・エルマコフ
  メフメネ・バヌー(女王、シリンの姉):ウリヤーナ・ロパートキナ

 ロパートキナは、「クール・ビューティー」という言葉がそのまま当てはまるようなバレエ・ダンサーです。頭の先から、つま先まで神経が行き届いた完璧な踊りです。しなやかな中に一本筋が通ったような芯の強さを感じます。

 クリスティーナ・シャプランは、マリインスキー・バレエに移籍してまだ1年余り、きっと大抜擢なんだろうと思いますが、ロパートキナと一緒に踊る時は、緊張からか?固さが目立ち、バランスを崩す場面も何度かありました。『愛の伝説』の振り付けは特に難しく、手と足の動きが独特です。この振り付けを間違わないように踊ることに精一杯で、余裕がないのも感じられました。まだ若いのでこれからに期待しています。

 マリインスキーの舞台演出は、とても質素で簡素な雰囲気を受けました。場面展開を板絵の変更だけで行っていますが、板絵の絵が簡略化し過ぎていて、具体的な場面をイメージできない部分が多々あります。衣装も、それほどお金をかけているようには思われません。
 バレエは、踊りを魅せるということに特化するのであれば、マリインスキーは文句なしの一流のバレエです。しかし、何か?物足りなさを感じてしまうのです。日常からかけ離れた豪華な夢の舞台や、豊かな感情表現を言葉ではなく身体全体の動きから感じてみたりとか、踊りプラスα(アルファ)を求めていることに気づかされてしまいました。

 もしかしたら、華やかな舞台演出で表現力豊かなザハーロワのいるボリショイ・バレエが好みなのかもしれません。マリインスキーは、あと『白鳥の湖』『ロミオとジュリエット』を観に行く予定です。全部観終わった時に、その答えはたぶん出ているのでしょう。








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 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

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