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シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』




 シュツットガルトの鬼才と称された振付師ジョン・クランコの代表作『オネーギン』を初めて観に、上野公園を訪れました。連休の初日で天気にも恵まれ、上野公園は家族連れの人たちで賑わっています。銀杏の木々も色づきはじめ、季節の移り変わりを感じます。

文化会館

 『オネーギン』は、ロシアの詩人プーシキンの韻文小説「エヴゲーニー・オネーギン」をバレエ化したものです。音楽はバレエ団のコンサート・マスターだったクルト=ハインツ・シュルツェが、チャイコフスキーの曲をもとに全曲を管弦楽曲化しました。

 物語は、世を拗ねた知識人オネーギンと、美しく誠実な女性タチヤーナの悲恋を描いています。

 『オネーギン』という作品の素晴らしさは、しっかりした筋の物語で、その場面場面の曲と振り付けがピッタリと合っていることです。また「鏡」「手紙」といった小道具を巧みに用い、繊細な心理状態を実にうまく描いています。ドラマティック・バレエの最高峰の作品と言えるでしょう。お芝居好きの私たちには、ドラマティック・バレエはとても性に合っているとしみじみ感じました。

 フリーデマン・フォーゲルのオネーギンとアリシア・アマトリアンのタチヤーナのコンビは、「今が旬」で脂ののった最高のペアだと思います。甘ーいマスクですっきりとした体のフォーゲルとしなやかで柔らかい動きのアマトリアンのオネーギンとタチヤーナのデュエットは、圧巻です。
 第一幕「鏡のパ・ド・ドゥ」では、若くて初々しいタチヤーナの恋心の高まりを表現しています。また終幕のパ・ド・ドゥでは、二人が年齢を重ねた雰囲気(衣装と化粧)で過ぎ去った愛を求めるオネーギンの懇願と、彼へ強い愛情を残しながらもオネーギンに背を向けるタチヤーナの辛い思いが交錯します。この「不和のデュエット」は、今まで観た中で最高のパ・ド・ドゥです。心の動きが音と振り付けの動作と見事にマッチしていて、高度なテクニックと表現力、二人の強い信頼関係がなければ、これ程のデュエットは成立しません。長い時間をかけて熟成されたペアの重要性を再認識しました。

 胸に迫って来るようなこのデュエットで幕切れとなります。割れんばかりの拍手が鳴り止まず、会場全体が熱い感情の渦の中にいるようです。これだけの拍手はボリショイのザハーロワの白鳥以来久しぶりです。「シュツットガルト・バレエ団」の素晴らしさに、ただただ圧倒されるばかりでした。
 年末にマリインスキーバレエがありますが、現時点では「今年一番のバレエを観た!」という気がします。




国立博物館 
 バレエを観る前に「東京国立博物館」に立ち寄りました。


兵馬俑 
 「特別展」は、『始皇帝と大兵馬俑』です。
 紀元前3世紀に作られたものが、今目の前にあるということが信じられません。1974年井戸を掘っていた農夫が発見したのが始まりで、発掘作業は今も続いていますが、八千体も出てきたというのですから、その驚きは如何ばかりであったか?想像もできません。

 展示品は模造品も多くありますが、本物もちゃんとあります。等身大の大きさで、どれ一つとして同じ顔のものは無く、精巧に作られていることに「ビックリポン!」です。始皇帝の強大な権力の凄さを感じます。



見返り美人 
 本館では、『見返り美人図』が展示されています。

 教科書にも載っていたこの絵は、思いの外小さかったです。こんなに有名な絵ですが、国宝にも重要文化財にもなってないことが不思議です。そもそも浮世絵は一枚も指定されていません。浮世絵は版画が多いので選ばれないのかもしれませんが、この「見返り美人図」のように肉筆画のものは指定されてもいいと思うのですが。。。浮世絵こそ日本を代表する一級の芸術品であり、国宝重要文化財に指定されるべきものだと思います。


 芸術の秋を堪能した一日でした。



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ジャンル : 学問・文化・芸術

シュツットガルト・バレエ団の『ロミオとジュリエット』




 『ロミオとジュリエット』は、今年の初めにボリショイシネマで観たのが初めてです。曲の素晴らしさと、バレエ構成の見事さに衝撃を覚え、ぜひ生で観てみたいと思っていた作品なのでとても楽しみにしていました。シュツットガルト・バレエ団のことがよくわからないまま、上野の東京文化会館にやって来ました。


シュツットガルド


 基準になるのがボリショイの「ロミジュリ」だけなのですが、第一幕から全く印象が異なります。振り付けの違いもさることながら、表現方法が緻密で一人一人の人物の描写が細かく、性格や雰囲気まで伝わってくるようです。それぞれの動作は、まるで台詞を語っているかのようにドラマティックです。
 20世紀の振付家であるジョン・クランコは、プロコフィエフとラヴロフスキーによって作られたドラマの構成基盤を崩すことなく舞台のシーンと音楽を一致させるドラマティック・バレエを目指しています。この意志を継ぐのが、ドイツのシュツットガルト・バレエ団です。

 ジュリエット役のアリシア・アマトリアンは、非常にしなやかで繊細な踊り手です。ロミオ(フリーデマン・フォーゲル)を信頼しきって完全に身体を預ける様子は圧巻です。力の抜き方、重量感の無い空気のようなリフト、ロミオと溶け合うように踊る息の合った二人のダンスは、今まで見たことの無い境地を感じます。
 それもそのはず、アリシア・アマトリアンとフリーデマン・フォーゲルは、同時期にプリンシパルとなり以来13年間看板ペアとして踊ってきているので、お互いを知り尽くしているのでしょう。これ程完成度の高いペアはいないと思いました。二人だからこそ出来る神業のような動きに、何度もハッとさせられました。

 シュツットガルト・バレエ団の凄いところは、主役の「ロミオとジュリエット」だけが突出して引き立つのではなく、どの役のダンサーにも光があてられていることです。それぞれの役を丁寧に描いたドラマティック・バレエの醍醐味と言えるのでしょう。一人一人のレベルも想像以上に高く、誰もが主役・準主役になれるほど上手いのも特筆すべきところです。

 ボリショイ・バレエ団の華やかで主役にスポットライトがあたるような演出とは異なり、シュツットガルト・バレエ団は物語を重視し、全ての役(ダンサー)が大切に描き出され調和と統一感を持った舞台が作り出されています。

 こういうバレエもあるのだとういう、新しいバレエに出逢えたような感動がありました。バレエを観ていると同時に芝居を観ているような、バレエの可能性の広がりを感じることができた一夜でした。








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タッチキンの「白鳥の湖」





 サンクトペテルブルク・バレエ・シアターは、1994年にコンスタンティン・タッチキンにより設立されたロシアで初の民間バレエ団です。バレエファンの間では、サンクトペテルブルク・バレエというより『タッチキンバレエ』と呼ばれ親しまれています。


 この強烈な白鳥のポスター(左下)に惹かれ、『白鳥の湖』を観に来ました。
タッチキン


 『白鳥の湖』は、かなり観てきましたが、間違いなく絶対忘れられない強烈なインパクトを残します。まさに、このポスター通りの印象です。

 イリーナ・コレスニコヴァは、「女優バレリーナ」と絶賛されるだけあって、目力といい、演技力といい、ずば抜けた才能を持っています。『この目』に、王子さまだけでなく、観客も皆やられてしまいます。今まで見てきたオデット、オディールのイメージが塗り替えられたような気がします。バレエの技術は、そこそこで決して卓越したものがある訳ではありませんが、それを感じさせない圧倒的な演技力が、見事な舞台を作り上げています。凄まじいまでの表現力に、好きな人と嫌いな人と別れるところではありますが、一度は観てみてほしいバレリーナです。芝居好きの私たちにとっては、こういうバレエもあり!だと思います。技術と表現力の両方を兼ね備えたバレリーナが、ザハーロワだったのだと改めて感じました。だから、好きで好きでたまらないのです。技術はともかくとしてコレスニコヴァの演技は、ザハーロワに並ぶ程といえるでしょう。

 「サンクトペテルブルク・バレエ」は、あまり人気がないのか? 残念ながら、会場の空席が相当目立ちました。そのためか、オケが来日せず東京ニューシティー管弦楽団に変更になっていました。指揮者だけの来日だったのが残念です。
 確かに、このバレエ団の技術はそこそこで、目を見張るようなダンサーはいませんでした。ジークフリート王子を踊った、客演のワディム・ムンタギロフも無難で平凡な王子さまでした。良くも悪くもコレスニコヴァあってのバレエ団とも言えますが、もっと多くの人たちに「女優バレリーナ」の素晴らしさに魅了されて欲しいです。



  サンクトペテルブルク・バレエ・シアター
     『白鳥の湖』全3幕4場 オーチャードホール
        オデット/オディール   イリーナ・コレスニコヴァ
        ジークフリート     ワディム・ムンタギロフ
        ロットバルト      ドミトリー・アクリーニン
        王妃          ナタリア・スミルノワ
        家庭教師        ディムチク・サイケーエフ
        道化          アンドレイ・フェドルコフ







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マシュー・ボーンの『眠れる森の美女』




 お友達が「今度マシュー・ボーンの眠りを見に行く」と話していて、私たちも見てみようと決めました。久しぶりに良く晴れて真夏の陽射しが照りつける中、恵比寿までやってきました。

眠れる森ポスター


恵比寿シアター 
 恵比寿ガーデンシネマは、とっても素敵な空間を演出しています。古い映画のモノクロ写真が、あちこちに(化粧室の中にも)飾られてお洒落で上質な雰囲気を醸し出しています。すべて解れば相当な映画通です。大好きなグレース・ケリーの写真が素敵でした。


オズの魔法使い 
 こんな懐かしい写真も。。。「オズの魔法使」。ミュージカル初期の大スター「ジュディ・ガーランド」は、子供の割にはちょっとおばさん顔なのが印象に残っています。(笑)



 今回の『眠れる森の美女』は、『白鳥の湖』を初めて観た時のような衝撃までは無かったものの、マシュー・ボーンの天才ぶりを再確認するようなバレエです。

 ホラー映画「チャイルド・プレイ」のチャッキーを彷彿とさせる人形を使ったオーロラ姫の赤ちゃん時代。成長したオーロラ姫もじゃじゃ馬でお転婆なちょっと凄い女の子。邪悪な妖精カラボスやカルドックとリラ伯爵(実はドラキュラ伯爵)たちとどちらが一体「悪」なのか?。「眠れる森の美女」の館が観光スポット化。キスで目覚めたオーロラ姫は運命の人を勘違い。。。などなど、これまでのストーリーと微妙に違いながら、本線は一脱しないので、それはそれで笑えます。

 妖しく幻想的な世界を豪華な衣装、不思議な動きと卓越した振付、素晴らしい舞台演出と照明効果を最大限に活かした完璧な舞台でした。名曲と天才的な振付師がいれば何度でもバレエは蘇るんだなと思いました。

 観ているものを全く飽きさせない、最初から最後まで口をポカ〜ンと開けたままミステリアスな世界に飲み込まれた状態です。映像でさえ、これ程惹き付けられるのですから、生で観たらどんなだろうか?と考えずにはいられません。まだまだイギリスから外には出てこないかも・・・。来日したら、絶対観に行きたい「バレエ」です。話してくれたお友達に感謝!感謝!です。


 恵比寿ガーデンプレイスの映画館に飾ってある名優名画の写真を見ていると、また昔のように映画館で映画鑑賞をしたくなってきます。最近は、良質な映画がほんとに少なくなってきたので足が遠のいていましたが、素敵な映画はやっぱり映画館で見たいですね。






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『ラ・バヤデール』〜アリーナ・コジョカル




 昨年12月に初めて『ラ•バヤデール』を観てから、4回目になります。

ラバヤ


 それまで『白鳥の湖』ばかりで、他の演目を観てこなかったのですが、ボリショイバレエ団のザハーロワの『ラバヤ』を観てからバレエの素晴らしさに目覚め、見られるだけ観てみようと思い立ち半年が過ぎました。気がつけば、ニューヨークまで行ってしまったという・・・ちょっと無謀な挑戦です。

 『ラバヤ』は、ボリショイのザハーロワに始まり、新国立劇場、ABT(アメリカン・バレエ・シアター)、東京バレエ団と観て来ました。今回の東京バレエ団のニキヤは、アリーナ・コジョカルです。直前に観たABTの印象が強く残っているので、それとの比較になってしまいますが、舞台演出や振り付けがとても良く似ているので比較しやすいこともあります。

 第一印象は、日本人バレエダンサーの質の高さです。特に、コールドバレエの一糸乱れぬ美しさは圧巻です。その見事さに誇りさえ感じました。また、東京バレエ団の衣装は豪華で綺麗だなあ〜!と、うっとりしながら見ていました。やっぱりバレエは、衣装もとっても大事だと思います。

 コジョカルは、思いの外小柄で筋肉質です。背丈は日本人よりも小さくて、ちょっとビックリです。そのためか?東京バレエ団とのバランスが良く、違和感なく観ることができます。非常にしなやかで、正確な技術力、卓越した表現力に魅了されます。キュートなニキヤを演じています。
 ソロル役のウラジーミル・シクリャローフは、甘いマスクの王子様にふさわしい容姿を備えていますが、ちょっと平凡に感じたのは、ABTのキミン・キム(マリインスキー)が余りにも素晴らしかったせいかもしれません。

 全体的には、完成度の高い舞台で安心して観ていられました。今、日本人のバレエダンサーが色々なコンクールで良い成績をおさめているのがうなずけます。技術的な面では、ロシアのバレエダンサーに劣らないかもしれません。あと必要なのは、表現力とオーラです。身につけるのが難しい分野ではありますが、これからの日本バレエ界がますます発展していく予感を感じることができ楽しみです。





「ラ・バヤデール」マカロワ版 東京バレエ団
    ニキヤ      アリーナ・コジョカル
    ソロル      ウラジーミル・シクリャローフ
    ガムザッティ    奈良春夏
    大僧正      木村和夫
    国王       永田雄大
    ブロンズ像    梅澤紘貴





 

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Author:南十字星
 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

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