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五代目 中村雀右衛門襲名披露公演(昼の部)



 三月の歌舞伎座は、五代目中村雀右衛門襲名披露です。
 歌舞伎を観慣れている方でないと聞き慣れない名前かもしれません。
 読み方は「中村じゃくえもん」。
 先代の四代目は女形の名優で人間国宝でした。
 赤姫と言われる、お姫様役を得意とし90歳まで舞台に立ち続けました。
 私達は、先代の晩年の舞台を数年間だけ観る機会に恵まれました。

雀右衛門祝幕


祝幕納箱 

 昼の部の雀右衛門襲名演目は、『鎌倉三代記』で時代物の名作です。北条時政の娘・時姫(雀右衛門)は、敵方の源頼家に仕える三浦之助義村(尾上菊之助)の許嫁です。病床の老いた母のもとへ、三浦之助が暇乞いに訪れると時姫が母を看病しています。時姫は夫になる人を恋慕いますが、敵方になる姫を妻にできないと拒みます。父時政を討てば妻にしようという三浦之助の難題をついに受け入れます。

 時姫は、『本朝廿四孝』の八重垣姫、『金閣寺』の雪姫と並ぶ「三姫」の一つです。今回、新雀右衛門が初役で勤めています。正直なところ、物語が面白く感じられないせいもあり、雀右衛門の巧さが引き立っていないと思えました。その原因は、雀右衛門の容姿が赤姫にむいていないこと。初役でまだまだ練れていないこと。三浦之助の菊之助は、菊五郎の代役で急遽初役で演じることになったこと。などが考えられます。

 父四代目の雀右衛門が赤姫を得意としていたので、襲名公演に「三姫」の二つを持ってきていますが、新雀右衛門が得意とする役柄はちょっと異なるような気がします。ちょっとおきゃんな下町娘とか、気っぷの良い姉御が役柄としては合っていると思います。襲名公演だからと言って、先代の役にこだわるのではなく、本人が最も得意とする役で襲名公演をやってほしかったと感じました。

 襲名公演がこれから続いてきますが、演目はもっと考えてほしい気がします。蒼々たる歌舞伎俳優が勢揃いしているのですから、それぞれが得意とするものを出してもらいたいものです。



五代目中村雀右衛門襲名披露
三月大歌舞伎 歌舞伎座 昼の部
  一 寿曽我対面
  二 女戻駕
    俄獅子
  三 鎌倉三代記 絹川村閑居の場
  四 団子売





テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

吉右衛門の次郎左衛門は、極めつき!(籠釣瓶花街酔醒)




 二回目の『籠釣瓶花街酔醒』は、一階席のチケットを格安で購入することができました。お陰で、前回よりも舞台に近くなって花道も端から端まで観ることができます。

籠釣瓶板絵2


 最初に観た時は、ただただ尾上菊之助の八ツ橋にばかり目が行ってしまい、ほれぼれと眺めていました。今回は、中村吉右衛門の次郎左衛門から目が離せなくなりました。「見染め」から「縁切り」をへて「殺し」に至る極限の感情表現を見事に演じています。

 「見染め」の場面では、田舎者ながら商売一筋の真面目な絹商人の旦那が、花魁道中の八ツ橋を見た瞬間一目惚れして魂を吸い取られ、涎をたらさんばかりにポカンと口を開けて放心状態になった姿は共感を誘います。
 
 「縁切り」の場面は、身請けの話しまで進んでいる中、急に「愛想づかし」をされ「寝耳に水」といったような驚きと戸惑い。天国から地獄に突き落とされた行き場の無い感情を押し殺し花魁に語りかけるところは、次郎左衛門が人が良いだけにじんわりとした哀れさと同情が、舞台上だけでなく観客全体に広がっていきます。「何も、満座の中で愛想づかしをしなくてもよいじゃ〜ないか!」と思わせるところは、極めつきの演技と言えます。

 「殺し」に至る場面では、恥辱を受けてから四ヶ月後何もかも整理し再び吉原に現れます。我慢に我慢を重ねてきた分、憎悪の念も大きく深く修復できるものではありませんでした。次郎左衛門が、「籠釣瓶」の刀で一刀で斬り捨てるところは恨みと決意の固さを思わせる凄みと怖さがあります。
 一途で純粋な思いが、狂気へと変わっていく様子が見事に表現され、円熟した最高の芸を生み出しています。

 吉右衛門のハラ芸(精神性)の高さ、円熟期を迎えた芸術性、間違いなく最高傑作の舞台の一つに挙げることができます。十分過ぎる満足感を得られた舞台です。






テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

菊之助の八ツ橋、あっぱれ見事!(籠釣瓶花街酔醒)




 今月の歌舞伎座の演目には、ちょっと興味が沸かず「夜の部」の『ひらかな盛衰記:源太勘當』だけ一幕見席で行けばよいか?と考えていました。ところが劇評を読んで『籠釣瓶花街酔醒』は観ておかないとまずいと思い直し、一番安い席を取りました。


二月歌舞伎座


籠釣瓶板絵 

 観に来て本当に良かったです。当月の『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』は、今までで最高傑作の出来映えです。

 この演目は、三世河竹新七が講談の「吉原百人斬り」をもとに脚色した世話物の名作です。
 物語は、田舎者の絹商人・次郎左衛門(中村吉右衛門)が、下男の治六(中村又五郎)とともに吉原を訪れ、美しい花魁八ツ橋(尾上菊之助)に心を奪われてしまいます。八ツ橋のもとへ通いつめ、身請けの話まで進みますが、八ツ橋の情人・繁山栄之丞(尾上菊五郎)から次郎左衛門との縁切りを迫られた八ツ橋は、満座の中で心ならずも次郎左衛門に愛想づかしをします。その場は、じっと堪えて佐野に戻った次郎左衛門は、四ヶ月後再び吉原に現れ、恨みを晴らすため家伝の宝刀「籠釣瓶」で八ツ橋を一刀のもとに切り捨てます。
 
 「見染め」から「縁切り」をへて「殺し」に至る世話狂言の構成ですが、それぞれの演出が洗練されています。特に「見染め」の場面は、夜桜の咲き誇る仲の町を背景に花魁道中を描き、それとは対照的にあばたの田舎商人が魂を吸い取られたように花魁に見とれ、八ツ橋が花道つけぎわで次郎左衛門を見返って妖艶に笑う一瞬は、女方の芸の極みです。
 今回の菊之助の八ツ橋は、この微笑みがこの後起こる全てを物語っているような、背筋がゾクゾクする妖艶で不気味な華やかさを放っています。

 「縁切り」の場面で、次郎左衛門が「花魁、そりゃァあんまり袖なかろうぜ」と腹の底から絞り出すような訴えを胡弓の音色にのせてしめやかに語られるところは、吉右衛門の真骨頂と言えます。それを受けての菊之助の八ツ橋の愛想づかしは、情人に迫られ大切なお客を遠ざけようとしているのであり、最初は次郎左衛門に対する申し訳なさから心痛な面持ちです。途中からは、周囲の者からあまりたしなめられ本当に次郎左衛門が嫌になり、最後は遊女という立場の悲しさを身にしみて感じるという刻々と変化してゆく心境を見事に表現しています。
 今までの菊之助とは、明らかに違います。良く通る美しい声、容姿端麗、踊りも巧く申し分無い演技力。ただ一つ物足りなかったのが、感情表現力が淡白で深みに欠けていたところです。義父・中村吉右衛門の教えを受けてからというもの、もの凄い進歩を遂げていますが、今回の八ツ橋は、花形役者の枠を超えたことを強く印象づけました。

 最後「殺し」の場面で、八ツ橋が一刀で斬られてスローモーションのように崩れ倒れていく姿があまりにも美しく、切なくて、まるで映像の世界を生で演じているような不思議な余韻で満ちています。

 情人・栄之丞の菊五郎は、年齢を忘れてしまう程の色気と格好良さを持ち合わせ、これ以上の栄之丞は望めないでしょう。

 治六の又五郎をはじめ、立花屋長兵衛の中村歌六、女房おきつの中村魁春、権八の坂東彌十郎、その他脇を固める配役が完璧で、当代の歌舞伎俳優の粋を集めたパーフェクトの舞台です。これだけの舞台を観ることは、そうは無いと言えます。
 「一度きりではもったいない。もう一度観に行かないと後悔すると、今二回目の舞台を一階席で観るため画策中です。」



 一幕見席で行こうとしていた『ひらかな盛衰記:源太勘當』は、それぞれの配役は役柄に合っていて一人一人は良いのですが、何故か?盛り上がらない舞台でした。ちょっと残念な気がします。



二月大歌舞伎 歌舞伎座 夜の部
  一 ひらかな盛衰記 源太勘當
  二 籠釣瓶花街酔醒
  三 浜松風恋歌









テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

フジテレビ「密着!中村屋ファミリー大奮闘」2月5日放送



2月5日(金)21:00〜22:52
フジテレビ金曜プレミアム「密着!中村屋ファミリー大奮闘」を放送します。

 中村勘三郎、坂東三津五郎を相次いで失い、
 中村福助も病気療養中の中、
 「平成中村座」を引き継いだ、勘九郎・七之助兄弟とファミリーの密着ドキュメントです。

 歌舞伎界最高齢の94歳まで現役役者だった先先代のお弟子さん、中村小三山さんのこと。
 4歳の長男「七緒八(なおや)君」、2歳になった次男「哲之君」の成長ぶり。
 勘九郎の奥さん前田愛さんの大奮闘。
 平成中村座大阪公演の舞台裏など、

 中村座の一ファンとして多くの方に見て頂きたいと思い告知です。

 是非、ご覧ください。


テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

2015年 歌舞伎観劇〜INDEX〜

 



2015年 歌舞伎観劇〜INDEX〜




01月03日 「石川五右衛門」                新橋演舞場(海老蔵)
01月09日 「祇園祭礼信仰記〈金閣寺〉」          歌舞伎座昼(七之助)
01月09日 「蜘蛛の拍子舞」                     (玉三郎)
01月09日 「一本刀土俵入」                     (幸四郎)
01月14日 「番長皿屋敷」                 歌舞伎座夜(吉右衛門)
01月14日 「女暫」                         (玉三郎)
01月14日 「黒塚」                         (猿之助)
01月23日 「仮名手本忠臣蔵 五、六段目」         浅草二部 (松也)
01月23日 「猩々」                         (種之助)
01月23日 「俄獅子」                        (松也)
01月27日 「南総里見八犬伝」               国立劇場 (菊五郎)
02月06日 「吉例寿曽我」                 歌舞伎座昼(歌六)
02月06日 「彦山権現誓助劔」                    (菊五郎)
02月06日 「積恋雪関扉」                      (幸四郎)
02月11日 「一谷嫩軍記」                 歌舞伎座夜(吉右衛門)
02月11日 「神田祭」                        (菊五郎)
02月11日 「水天宮利生深川〈筆屋幸兵衛〉」             (幸四郎)
03月06日 「梅雨小袖昔八丈〈髪結新三〉」         国立劇場 (橋之助)
03月06日 「三人形」                        (錦之助)
03月17日 「菅原伝授手習鑑 加茂堤、筆法伝授、道明寺」  歌舞伎座昼(仁左衛門)
03月25日 「菅原伝授手習鑑 車引、賀の祝、寺子屋」    歌舞伎座夜(染五郎)
04月08日 「双蝶々曲輪日記 角力場」           平成中村座(彌十郎)
04月08日 「勧進帳」                        (橋之助)
04月08日 「新皿屋舗月雨暈〈魚屋宗五郎〉」             (勘九郎)
04月10日 「梶原平三誉石切〈石切梶原〉」         歌舞伎座夜(幸四郎)
04月10日 「成駒家歌舞伎賑 鴈治郎襲名披露口上」          (鴈治郎)
04月10日 「心中天綱島〈河庄〉」                  (鴈治郎)
04月10日 「石橋」                         (染五郎)
04月17日 「碁盤太平記」                 歌舞伎座昼(扇雀)
04月17日 「六歌仙容彩」                      (菊五郎)
04月17日 「廓文章 吉田屋」                    (鴈治郎)
04月22日 「梶原平三誉石切〈石切梶原〉」         歌舞伎座夜(幸四郎)
04月22日 「成駒家歌舞伎賑 鴈治郎襲名披露口上」          (鴈治郎)
04月22日 「心中天網島〈河庄〉」                  (鴈治郎)
04月22日 「石橋」                         (染五郎)
05月08日 「慶安太平記 丸橋忠弥」            歌舞伎座夜(松緑)
05月08日 「蛇柳」                         (海老蔵)
05月08日 「神明恵和合取組〈め組の喧嘩〉」             (菊五郎)
05月11日 「摂州合邦辻 合邦庵室」            歌舞伎座昼(菊之助)
05月11日 「天一坊大岡政談」                    (菊五郎)
06月10日 「天保遊侠録」                 歌舞伎座昼(橋之助)
06月10日 「新薄雪物語 花見・詮議」                (菊之助)
06月15日 「新薄雪物語 広間・合腹・正宗内」       歌舞伎座夜(仁左衛門)
06月15日 「夕顔棚」                        (菊五郎)
06月18日 「壺阪霊験記」                 国立劇場 (孝太郎)
07月02日 「三人吉三」                 シネマ歌舞伎(勘九郎)
07月05日 絵本合法衢」                大阪松竹座夜(仁左衛門)
07月06日 絵本合法衢」                大阪松竹座夜(仁左衛門)
07月07日 「御存鈴ヶ森」                大阪松竹座昼(孝太郎)
07月07日 「雷船頭」                        (時蔵)
07月07日 「ぢいさんばあさん」                   (仁左衛門)
07月13日 「一谷嫩軍記 熊谷陣屋」            歌舞伎座夜(海老蔵)
07月13日 「怪談牡丹燈籠」                     (玉三郎)
07月17日 「義経千本桜 渡海屋・大物浦」         国立劇場 (菊之助)
07月24日 「南総里見八犬伝 芳流閣屋上・円塚山」     歌舞伎座昼(獅童)
07月24日 「与話浮名横櫛 見染め・源氏店」             (海老蔵)
07月24日 「蜘蛛絲梓弦」                      (猿之助)
07月24日 「怪談牡丹燈籠」                歌舞伎座夜(玉三郎)
08月07日 「ひらかな盛衰記 逆櫓」           歌舞伎座二部(橋之助)
08月07日 「銘作左小刀〈京人形〉」                 (勘九郎)
08月12日 「ひらかな盛衰記 逆櫓」           歌舞伎座二部(橋之助)
08月13日 「おちくぼ物語」               歌舞伎座一部(七之助)
08月13日 「棒しばり」                       (勘九郎)
08月19日 「芋掘長者」                 歌舞伎座三部(橋之助)
08月19日 「祇園恋づくし」                     (扇雀)
09月14日 「伽羅先代萩」                 歌舞伎座夜(玉三郎)
09月19日 「双蝶々曲輪日記」               歌舞伎座昼(梅玉)
09月19日 「紅葉狩」                        (染五郎)
09月19日 「競伊勢物語」                      (吉右衛門)
09月24日 「操り三番叟」                 赤坂歌舞伎(勘九郎)
09月24日 「於染久松色読販〈お染の七役〉」             (七之助)
10月02日 「高野聖」                  シネマ歌舞伎(玉三郎)
10月07日 「伊勢音頭恋寝刃」               国立劇場 (梅玉)
10月14日 「壇浦兜軍記〈阿古屋〉」            歌舞伎座夜(玉三郎)
10月14日 「梅雨小袖昔八丈〈髪結新三〉」              (松緑)
10月19日 「壇浦兜軍記〈阿古屋〉」            歌舞伎座夜(玉三郎)
10月19日 「梅雨小袖昔八丈〈髪結新三〉」              (松緑)
10月21日 「音羽嶽だんまり」               歌舞伎座昼(松也)
10月21日 「矢の根」                        (松緑)
10月21日 「一條大蔵譚」                      (仁左衛門)
10月21日 「人情噺文七元結」                    (菊五郎)
10月23日 「ワンピース」                 新橋演舞場(猿之助)
11月11日 「江戸花成田面影」               歌舞伎座夜(堀越勸玄)
11月11日 「元禄忠臣蔵 仙石屋敷」                 (仁左衛門)
11月19日 「神霊矢口渡」                 国立劇場   (吉右衛門)
11月25日 「源平布引滝〈実盛物語〉」           歌舞伎座昼(染五郎)
11月25日 「若き日の信長」                     (海老蔵)
11月25日 「曽我綉侠御所染〈御所五郎蔵〉」             (菊五郎)
12月07日 「東海道四谷怪談」               国立劇場 (幸四郎)
12月10日 「本朝廿四孝 十種香」             歌舞伎座昼(七之助)
12月10日 「赤い陣羽織」                      (中車)
12月10日 「重戀雪関扉」                      (松緑)
12月24日 「妹背山婦女庭訓」               歌舞伎座夜(玉三郎)















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南十字星

Author:南十字星
 自然観察と歌舞伎が大好きな夫婦でつくっているブログです。生田緑地と伊豆海洋公園をフィールドにネイチャーフォトを楽しんでます。

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